都市の若者を豊田市の過疎地に定住させる「日本再発進! 若者よ田舎をめざそうプロジェクト」が9月から始まった。過疎化が進む旭地区で、若者10人が集団生活をしながら農業に励んでいる。市自治振興課は「滑り出しは上々ですが農業をなりわいにするのは大変なこと。これからです」と見守る。新たな一歩を踏み出した若者たちを訪ねた。【丸林康樹】
豊田市の市街地から車で約1時間半。山あいの同市太田町の福蔵寺と、東萩平町の空き家の2カ所がプロジェクトの現場だ。両地区は人口が100人未満で、65歳以上の高齢者が半数以上を占める過疎地。のどかな昼時、作業を終えた若者たちが、くわなどを担ぎながら福蔵寺に帰ってきた。寺の台所では、先に作業を終えた昼食担当者が食事を作っている。メニューは炊き込みご飯、野菜炒め、豚汁など。集団生活にも慣れたのか、会話が弾むにぎやかな昼食が始まった。
プロジェクトは中山間地の過疎対策と緊急雇用対策の一環だ。財政面で援助する市、計画を立案した東京大、農業指導をする常滑市の会社「M-easy」の3者が協力。若者らは2012年3月まで耕作放棄された農地を借り、無農薬農業の技術を学びながら野菜を栽培し、都市部で直接販売するルートを開拓する。期間中は月15万円の給与が支払われるが、将来は自立して定住し、地域で活躍してもらう計画だ。
全国から不況で職を失ったり、フリーターだったりした男女39人の若者が応募した。書類審査や2泊3日の合宿で、22~33歳の男女10人(男性7人、女性3人)が選ばれた。現在、福蔵寺に男女6人が、空き家に男性4人が住んでいる。
午前6時半に起床し、ラジオ体操で一日が始まる。昼間は農作業、夕食後は、みんなで語り合って過ごすことが多い。食事の準備やトイレ掃除などの担当は輪番。小学校教諭の経験がある北原さとみさん(32)は「寺に住むと聞いて、修行僧みたいなイメージがありましたが、1人ずつ部屋が割り当てられていて快適」と話す。
畑の溝を掘る作業では、直径50センチ以上もある大きな石がごろごろと出てきて取り除くのに苦労した。これから大根やニンジン、春菊、キャベツなど冬物野菜の栽培に取りかかる。かつては自動車部品の製造ラインで働いていた渡辺照見さん(31)は「やっと種がまけるようになり、自分専用の畑もできたので楽しい」と喜ぶ。
この間、地域の祭りや小学校の運動会、自治区の草刈り作業にも積極的に参加した。農家からよく野菜などが差し入れされる。「頑張ってね」と声を掛けられるという。地域も若者を温かく迎え、期待を膨らませている。
将来について尋ねると「不安はない」「今はすごく楽しい」「模索中」とそれぞれだ。プログラマーをしていた山田友紀さん(33)は「1人なら果てしなく感じる作業も、仲間がいるから頑張れる。家族みたいに大勢でご飯を食べられるのもうれしい」と話す。
毎日新聞 2009年11月8日 地方版
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