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コウノトリ空へ 2005初放鳥

元飼育長・松島興治郎さんに聞く/番外編 /兵庫

記者の質問に答える松島興治郎さん(右)=豊岡市立コウノトリ文化館で9月16日、池田啓さん写す

聞けた宝のような言葉

 インタビューが終わりに近づいたころ、松島さんがとつとつと語った言葉が忘れられない。

     「人生の表の部分だけを出すとかっこいいけど、本当はもっと、そうじゃない部分の中にその人の人間性があるんですよ。ウソじゃないんだけど本当じゃなくなっちゃうの。真実なんだけどすべてが真実じゃない」

     放鳥本番を前に「コウノトリに半生をささげたヒーロー」への視線も熱を帯びた。だが、当の主人公はずっと戸惑っていたという。「注目されてるっていうか、意識されてるっていうのはずっと(感じていた)。だから私は、あえて寡黙になったところもあります」

     思い出したくない現実も爆発させたい喜びもあったに違いない。私は「寡黙の壁」に何度も挑んだが、時に厳しく、あるいはやんわりはね返された。

     それでも少しだけ「真実」に触れられた実感もあった。

     「もう本当にね、朝起きたら『わぁっ、生きてる!』って感動するんです。それで一日済んだ、『今日も頑張った』『明日もあるように』って」(第16回「ああ、今日も生きてる」)。

     飼育場で「カゴの鳥」になったコウノトリと寝起きをともにする過酷な日々。松島さんは豊岡で一番、やってくる朝の恵みを知っている1人に違いない、と思った。

     妻久美子さんと2人の子どもに話題が及ぶと、深く刻んだ目じりが潤んでいくのが見えた。プロとして生きたがゆえの松島さんの心苦しさや家族への思いが痛過ぎるほど伝わってきた。「老人だから」と照れる松島さんに聞こえないよう、私は鼻をすすった。

     30回ですべてが伝え切れたとは思っていない。それでも、根気強く取材に付き合って下さった松島さんの「真実を埋もれさせようとは思わない」との言葉が連載の支えだった。宝のような言葉を大切にしながら、私はまだ語られない「真実」が明らかになる日を待つつもりでいる。【武井澄人】

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