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ネットウオッチ

ネットの記事の質は低下しているのか 伊與田孝志さんに聞く

伊與田孝志さん

 フェイスブックやツイッターなどソーシャルメディアの進展により、個人が受け取る情報量は飛躍的に増えた。だが、誤った情報や事実を歪曲(わいきょく)した情報も多くなったという実感はないだろうか。IT大手のニフティでテレビとツイッターの連携サービス「みるぞう」を手がけた伊與田孝志さん(41)がブログで書いた「なぜネット記事の質が低下しているのか?」がメディア関係者の間で話題を呼んだ。20年近くコンテンツをみている伊與田さんに話を聞いた。【柴沼均】

−−2011年に、ソーシャルとテレビを結びつけるビジネスとして「みるぞう」をはじめたが現状は。

 伊與田氏 私自身は8月でみるぞうから異動したが、ビジネス的な意味で言うと、ソーシャルでテレビ業界の閉塞(へいそく)感を打破するというのは難しいというのが正直なところ。テレビの視聴者は視聴率1%で100万人の桁。ツイートしている人は1番組で多くても何千人単位。しかも、ツイートも数だけでは意味が無く、意味を考慮しなければならない。ビジネスを動かせるかというと、なかなかできない。もう一つ、テレビとソーシャルが連動した広告で、広告ビジネスの構造が動くか期待していたが、それも不発に終わった感じ。

 ただ、最初の期待が幻滅に変わった段階で、今後、手堅いものが立ち上がるかが焦点。テレビ局もお祭り的に仕掛けている感じが多かったが、最近良く聞くのが「O to O to O(オンエアー・ツー・オンライン・ツー・オフライン)」という言葉。テレビのオンエアで情報をみて、ネット端末にクーポンなどが出て、実際に店に行って買うというような動きのことだ。日本テレビが言い出して、他局も追随して、お祭りのあとに非常に手堅いところを狙い始めた兆候ではないかと思っていて、そこに「みるぞう」がうまくはまるかな、というのが見えてきた。

−−そういうなか、「なぜネット記事の質が低下しているのか?」という刺激的なタイトルのブログを書かれたが、コンテンツの質は下がっているのか。

 伊與田氏 必ずしもそうでなく、上がっている部分もある。バイラルする(口コミで広まる)ように狙って作るようになったのは、良いか悪いか微妙だが、ウェブの黎明(れいめい)期に流行していたコンテンツも下らないものがあり、今の話題になるコンテンツのほうが質が高かったりする。しかし、フェイスブックを中心にソーシャルの流通で目に入りやすくなっている情報が増えている。半自動的に流れ込む情報に依存し、ゴミもいっぱい入ってきて不愉快になる。昔は情報はこんなにガンガン入ってくることはなかった。かなり歪曲されたものでも、みんな信じて流通してしまう。リツイート(転載)も「この犬が可愛いとおもったらリツイート」みたいに、情報の内容よりも遊びのリツイートが結構量を占める。

−−大量にゴミ情報が流れてきても、みんながおかしいといえば、ネットの集合知が働くことになるのでは。

 伊與田氏 現状、そうなっていない。フェイスブックだと「いいね」、コメント、「シェア」とポジティブなものしかなく、この記事ひどいなと思っても「いいね」を押してしまい、記事だけがどんどん流通する。リテラシーが高い人でも、この記事けしからんなあと思ったらシェアしてしまい、それが連鎖されていく。もし、中身が違うというコメントが付いていたとしても、ニュースフィードの中に良くない記事が多いとの印象になってしまう。コンテンツに対してマイナス評価をする仕組みがあれば、フィルターも働くかもしれないが。

−−伊與田さんのブログでは極端な記事でページビュー(PV)稼ぎを狙うケースが目につくようになったとも指摘している。

 伊與田氏 記事を提供する側が、バイラルするように記事を作るというのが手法となっている。ちゃんと素直に真実をいうよりも、極端にいったほうがバイラルしやすい。バイラルさせることがビジネス的に得であるという方法論が進化して、そのような記事が増えてきた。

 いまのネットメディアは、ざっくりいうとPVを稼いだ者が勝ちというルールのゲームになっている。ゲームのルールがそうだから、(引っかけるような)「釣りのタイトル」を見出しにつけるのは当然の行動で、モラルが低いといっても仕方が無い。PVが高いもの勝ち、シェアされたもの勝ちというルールが変わらなければ、この傾向は変わらないだろう。ユーザーは自分の目でコンテンツの良しあしを選別するしかない。

 キュレーションサービス(お勧め記事を紹介するサービス)はまだ可能性があり、何を掲載するか自分たちで選べる。バイラルするからといって、いかにバイラルされても、ネガティブ評価されているものは載せないというコントロールをどうするかだ。

−−ネットメディアでは、ニュースとブログに書くようなエッセーの垣根がなくなってきており、どれくらいの信頼性を保証する記事なのか、読者に適切に伝わっていない。

 伊與田氏 例えば、僕の知り合いでハフィントンポストに転載されている人は、最近怖くて自由に書けなくなったという。想像以上に反響が来て、ネガティブなことでたたかれた経験もあるという。ネットは不確実でも、ないよりはあったほうがよい情報もある。個人がとりあえず気づいたことをネットに書くことが、大事なことにつながることも多い。それを、ちゃんと裏をとれとか、きちんと調べろといって、封印されるべきではない。

 だから、読者にこれは根拠が薄い単なる考えですということが読者に伝わるような伝え方をしないとならない。それがネットメディアに掲載されると、書いている人のスタンスから切り離されて、メディアの記事として流通してしまう。すり替わってしまう。「これは記事でなくてブログです」と書き手からすれば免責事項的に表明できればいいのだけど。

−−信頼できる指標がないと困ってしまう。

 伊與田氏 フェイスブックに関しては、ニュース取得メディアとしての価値は、今のロジックを変えないとゴミを振り落とせないので生き残れないのでは。ゲームのルールを変えることはフェイスブック自身がやれるはず。同様にキュレーションアプリやポータルメディアも掲載する選別基準を変え、主要な記事の流通ルートが変わってくると、記事を出す側もおのずと変わっていかざるを得ない。ゲームのルールが変わることを期待したい。そうしないとユーザー離れが起きるだろう。

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