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体に優しい温泉の入り方

入浴は1日3回まで 朝風呂にはリスクも

主な掲示用泉質と特徴

スーパー銭湯にも効果

 秋の訪れとともに、湯煙が恋しくなる。日本人は、温泉地の年間宿泊者数が延べ1億人を超える大の温泉好き。上手に付き合えば「天の恵み」ともいうべき効果も得られるという。どういう泉質の湯に、どのように入浴したらよいのか。専門家に聞いた。【田村彰子】

     環境省の温泉利用状況調査(2012年度)によると、国内の温泉地は実に3085を数える。それらは温泉法に基づき、11種類の「掲示用泉質」に分類される。

     脱衣場の壁には、泉質とともに「効能」や「適応症」が表示されている。「残念ながら、その全てが医学的根拠に基づいているわけではありません」と話すのは、埼玉医科大教授で日本温泉気候物理医学会副理事長の倉林均さんだ。表は、主な泉質と、これまでの研究でほぼ裏付けられている効果だ。倉林さんによると、温泉の医学的作用は三つ。物理作用、化学作用、生物作用だ。このうち物理作用には温熱、水圧、浮力、粘性による効果がある。

     まず温熱効果は、泉質の種類に関係なく得られる温泉の利点だ。「湯に含まれるイオンや化合物が皮膚の表面を覆って熱の拡散を防ぐため、家庭の風呂と違って湯冷めしにくいのです」。血行改善や新陳代謝の促進、筋肉の緊張緩和などが期待できる。

     さらに水圧による利尿効果が心臓の負担を減らし、浮力は関節の荷重負担を減らす。浴槽内で歩行すれば、湯の抵抗で軽いまひや関節疾患のある人の筋力回復にもつながる。粘性効果だ。

     一方、化学作用は泉質によって異なる。「明らかなのは血管と皮膚への効果です」と倉林さん。二酸化炭素泉に含まれる炭酸ガスと、硫黄泉の中の硫化水素ガスは、皮膚を通過して血管を広げる。血液の循環が良くなり、血圧が下がる。高血圧や慢性心不全の患者に適しているとされる。

     美肌効果があるのが、弱アルカリ性の湯だ。「美人の湯」と呼ばれる温泉で、皮脂の脂肪酸と混じり合い、せっけんのような効果を発揮して肌をすべすべにする。炭酸水素塩泉の多くが該当する。

     群馬大学医学部付属病院の草津分院(02年閉鎖)で研究を重ねた倉林さんは「草津温泉で1カ月、アトピー性皮膚炎の温泉療法を続けたところ、79%の患者の症状が改善しました。酸性で、マンガンイオンとヨウ素イオンを併せ持つ湯に効果があります」と言う。

     ただ、湯治ではない温泉旅行はせいぜい年に数回、しかも1、2泊の滞在だろう。温泉療法の専門医で国際医療福祉大教授の前田真治さんは「確かに治療として考えるなら、一時的な効果しか望めないでしょう。しかし、温泉地に滞在すること自体にリラックス効果があり、日常生活で乱れた自律神経を整えてくれます」。これは温泉の生物作用の一つ、総合的生体調整作用と呼ばれる。

     最近は、都市郊外などに「スーパー銭湯」と呼ばれる大規模な入浴施設も増えている。「単に湯を沸かしただけのところもありますが、施設によっては温泉が多量の塩分を含み、有名温泉以上の温熱効果が期待できます。東京近郊でよく見つかる『黒湯』は植物性の有機物を多く含む弱アルカリ性温泉で、美人湯の一つ。泉質を確認すれば、思わぬ名湯に巡り合えるかもしれません」(前田さん)

     温泉に着いたら、すぐに湯につかりたいが、「ぐっと我慢して」と前田さん。「長距離の移動で体は疲れており、脱水気味。まずは少し休んでください」。お薦めの時間は、午後9時ごろ。体内のリズムを整える副腎皮質ホルモンの分泌が抑えられてくる時間帯で、入浴をすることによってその抑制がよりスムーズにいく。副腎皮質ホルモンの波が整うと、よく眠れたり、朝も快適に起きられたりするという。1回の入浴で150〜180ccの水分が体内から失われるため、入浴の前後にコップ1杯ずつの水を飲もう。

     1日の入浴回数は1〜2回、多くても3回にとどめる。「それ以上入っても、温泉効果は変わりません。むしろ湯あたりする恐れが強まり、疲れるだけです」。では1回当たりの入浴時間は?

     「入浴中に体温が1度上昇するぐらいが適切で、2度上がると疲れます。温泉は沸かし湯よりも体温が上がりやすく、41度の湯なら10分もつかれば十分。長くても15分以内にしましょう」。体温を上げ過ぎると、温まった皮膚を冷ますための血液循環を妨げる。

     「温泉の楽しみ」に挙げる人の多い朝風呂はどうか。倉林さんは「朝は血圧が上がるだけでなく、睡眠中の脱水で血液粘度が上がり脳梗塞(こうそく)や心筋梗塞などの血栓症が起きやすくなります。血栓を生じやすい高血圧や糖尿病などの人は避けてください。高齢の方も、1人では朝風呂に行かない方がいいでしょう」と警鐘を鳴らす。どうしても入りたい場合は、起床後1時間以上を過ぎ、体が完全に目覚めてから水を飲んで入ると良い。雪の降る露天風呂も、外気との温度差が激しく血圧の変動幅が大きいので注意したい。

     「昔から『名湯』と呼ばれる温泉には、さまざまな泉質を絶妙なバランスで併せ持ったところが少なくない。例えば草津や北海道の登別、宮城県の鳴子などがそうです」。そう語るのは倉林さんだ。

     長期滞在は難しくても「命の洗濯」にはなるはず。たまには温泉でリフレッシュしませんか。

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