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人口減っても新幹線は必要 「デフレの正体」の藻谷浩介氏

もたに・こうすけ 1964年、山口県生まれ。東大法学部卒。日本政策投資銀行などを経て、日本総合研究所主席研究員。地域経済や人口問題などが専門で、平成の大合併前の約3200市町村のすべてを訪問した経験を持つ。

 高度経済成長時代に東海道新幹線が開業して50年。日本経済は、石油危機、バブルとその後の長期低迷など、さまざまな顔を見せた。成熟社会となった日本にとっての新幹線の意味は何か。地域の実情に詳しく「デフレの正体」「里山資本主義」などの著書がある藻谷浩介さんに話を聞いた。【聞き手・尾村洋介/デジタル報道センター】

 −−今の日本にとって新幹線の意味は?

 最初に言っておくと、私は北海道新幹線と北陸新幹線については建設賛成派です。2車線道路の幅しかとらない新幹線は、面積あたりの輸送量が道路よりはるかに大きく、エネルギー効率も自家用車とは比較になりません。新幹線の何万倍の延長距離を持つ一般道路の建設・維持・補修に回る税金の、ほんの一部を回すだけで整備が可能ですし、運営は民間会社であるJRが黒字でやってくれます。

 −−無駄ではないと?

 可住地人口密度(=総面積から内陸水域と森林の面積を除いた面積における人口密度)が世界屈指に高い日本の新幹線が無駄ならば、他国の都市間鉄道はさらに無駄ですが、実際には欧州でもアジアでも新線建設が続いています。日本の化石燃料輸入額は今世紀に入ってから3倍以上に増え、今後も上昇が確実。一定以上の輸送量の見込める区間には、自然エネルギーでも動かせる高速鉄道があった方がいい。これはこの先、日本の人口が半分になろうが同じです。

 −−新幹線はどこまで引いておくべきでしょうか。

 北海道新幹線を札幌まで。北陸新幹線は、今の基本計画とは違いますが、金沢から先、東海道新幹線の米原までです。長崎は一部区間に在来線幅の高速新線を通す方が効率的です。若狭に関しては、新幹線を通すよりも、湖西線の近江今津から小浜線の上中まで短い新線を引き、京阪神からの新快速を小浜まで乗り入れさせる方が、ずっと安価で活性化効果も大きくなります。

 −−札幌に必要だとする理由は。

 札幌開通により、日本の主要都市圏(人口100万人以上)すべてに新幹線が通ります。札幌の都市圏人口は240万人と、欧州の多くの国の首都よりも大きく、これを他の大都市圏とつなぐことでいろいろなシナジーが生まれます。

 東京−札幌は、今の東京−博多と同じで5時間以上かかりますから、開通後も航空機のシェアが大きいままでしょう。ですが、何でも東京中心で考えていてはいけません。

 九州各地と京阪神、岡山、広島との間の新幹線での流動はたいへん多く、九州新幹線開通後はさらに増えています。東北と北海道も同じで、現在でも新千歳から東北の各空港へは多くの便が運航されています。札幌まで新幹線が延び、仙台をはじめとする東北各地や北関東と、北海道の移動が飛躍的に容易になることには、大きな意義があります。北海道と東北の企業の、相互への展開も促進されます。

 また、大宮駅から乗車する首都圏北半分在住者にとっては、羽田経由でも、大宮から新幹線経由でも、所要時間は大きくは変わりません。さらに冬季は、新千歳空港便の運航がいくぶん不安定になります。新幹線はほぼ遅れないので、ビジネス客には安心ですね。飛行機に比べ乗り換えや待ち時間が少ない分、新幹線は高齢者にも便利です。

 −−北陸新幹線はどう考えていますか。

 北陸新幹線は来春に金沢まで開業し、さらに敦賀までの建設が決まっています。問題はその先で、基本計画では若狭の小浜、京都府の南丹あたりを通って大阪に向かうのですが、滋賀県の米原で東海道新幹線につなげるのが妥当です。

 現行計画は、需要の多い北陸−名古屋、北陸−京都の移動を無視したもので、他方で小浜や南丹も便利にはなりません。東京に行くには北陸経由よりも京都に出た方が安価で早いのです。北陸新幹線は、米原で東海道新幹線につなげ、現在毎時1本米原に停車している東京発のひかり号を北陸に直通させる。そうすると米原−新大阪に毎時1本分空きが出ますので、そこに大阪−京都−北陸の便を走らせます。

 敦賀−米原の50キロメートルを建設するのであれば、新大阪駅まで人口密集地帯に新線を通すという現行計画に比べ、費用も工期も桁違いに圧縮できます。東海地震などで東海道新幹線のどこかの区間がまひする事態になったときにも、北陸新幹線を迂回(うかい)して首都圏−関西の通行が確保できます。バックアップとしての費用対効果を考えれば、建設は急務でしょう。

 −−新幹線は昔から地域振興面での期待が強調されてきました。

 新幹線は全国的なネットワーク構築という観点で重要ですが、沿線地域の期待するような「活性化」には結びつかないのが現実です。交通が便利になることで、支店や営業所がより大きい町に統合されてしまうことが多く、観光客も宿泊から日帰りにシフトします。住民は他都市に行きやすくなって便利になりますが、地域経済にはむしろマイナスが大きいのです。

 −−「便利」と「地域振興」は別問題だと?

 便利イコール所要時間の短縮、時間がかからないイコール出費が減る、ですから「便利はデフレ」なんですよ。新幹線駅のある自治体の3分の2近くは人口減少です。新幹線で大宮ではオフィスが増えていますが、新潟や高崎、長野では街はにぎやかになっていません。新幹線が通っていない県は、こうしたマイナス面が起きていないことをむしろ喜んでもいいでしょう。

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