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エジプトの首都カイロの土産物店に売られている青石の首飾りや手形をモチーフにした装飾品。妬みや悪魔の目から守ってくれると信じられている=2014年10月21日、秋山信一撮影

 【イナス・タウフィーク(カイロ支局)】10月のある夕方、公共バスで帰路につく時、額に入ったイスラム教の聖典(コーラン)が運転席上部に掲げられているのに気づいた。開かれているページには「妬み」に関する一節が書かれていた。運転手は「成功をやっかむ同業者の悪魔の目から自分を守るためだ」と言った。やはりエジプト人は「妬み」を恐れている。社会階層や教育、宗教の別なく、妬みが事故や問題を引き起こすと信じているのだ。

     妬みで個人的に思い浮かぶのは小学生の時、イスラム教の先生が教えてくれた物語だ。イスラム教の預言者ムハンマドが双子の孫を授かった時、嫉妬深い女性が訪ねてきた。ムハンマドは孫には会わせず、代わりに双子によく似た大きさの石に布をかぶせて置き、女性に応対したという。女性が去った後、石は真っ二つになった。

     親戚のサミアさん(52)も、妬みのエピソードを教えてくれた。娘が高校生の時、テストで一流大学に入学できる点数をとった。友人たちは当然、彼女をうらやんだ。テストの後、娘さんは何週間も高熱に悩まされたため、サミアさんは毎日、神に祈った。彼女は今も高熱は妬みが原因で、治ったのは薬だけではなくて祈りが通じたからだと信じている。

     1970〜80年代には妬みをテーマにしたコメディードラマが人気になった。作品名にちなんで、嫉妬深い人を「シャラーラ」と呼ぶこともある。

     では妬みを避けるためにどうするか。コーランの113章に次のような一節がある。「おすがり申す、黎明(れいめい)の主に(中略)妬み男の妬み心の悪を逃れて」(岩波文庫、井筒俊彦訳「コーラン」)。何か良いことがあると、他人の妬みを避けるため、この一節をとなえる人は多い。

     青い石の首飾りを着けたり、5本指を立てたり、「ハムサ(数字の5)」と叫んだりするのも一般的だ。これはイスラム教には関係なく、エジプトに根づく慣習だ。タクシーに手をかたどったステッカーがよく貼られているのはこのためだ。青い石の首飾りは、古代エジプト王国時代から続く魔よけだとの説もある。私自身はこうした慣習ではなく、神とコーランに救いを求める。

     今回の取材で友人たちに妬みにまつわる話を聞いたが、誰もがとっておきのエピソードを語ってくれた。裏返せば、それほどエジプト人は妬みを意識しているということだ。(訳・秋山信一)

    公共バスの運転席の上部に掲げられたイスラム教の聖典(コーラン)。運転手が魔よけのためにとりつけている=2014年10月、イナス・タウフィーク撮影

    イナス・タウフィーク

    1980年、カイロ生まれ。アインシャムス大学(カイロ)で英文学を専攻。来日経験はないが、「いつか日本に行ってみたい」。日本食では天ぷらが好みで、お寿司など生魚は大の苦手。2005年6月に毎日新聞カイロ支局に入り、特派員の取材サポートなどを担当している。

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