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何に注意して登ればいいのか 焼岳で考えた

上高地から焼岳へ。樹林帯の高度を上げると、焼岳の姿が見えてきた=2014年10月11日午前8時30分、、小野博宣撮影

 9月27日の噴火で戦後最大の犠牲者を出した御嶽山(おんたけさん、3067メートル)は、日本百名山の一つ。比較的登りやすく、人気の山岳だった。同様に山頂付近まで登ることのできる活火山は、富士山をはじめ数多い。火山に登るにあたり何に注意したらいいのだろうか。北アルプスで唯一の活火山であり、日本百名山の焼岳(2455メートル)で考えてみた。【生活報道部・小野博宣、デジタル報道センター・高橋昌紀】 

     活火山には登らない方がいい、と思う方も多いだろう。しかし、荒々しい山肌を持つ活火山は山岳としての人気が高く、多くの登山者を集めている。そこで生計を立てている山小屋や観光業の関係者もいる。一律に「危険だから登るな」と禁止することは、現実的ではない。

     では、登山する際に必要なことは何だろうか? まず、活火山に限らないことだが、登山届は絶対に提出することだ。

     今夏、大手スポーツ用品メーカーが富士山の登山者に、登山届の提出を聞いたところ、6割の人が「提出した」と答えたという。数字の高さに驚かされるが、これは質問された登山者が提出していなくても「出した」と見えで答えたのではないかと思える。

     警察庁によると、2013年に起きた山岳遭難事故は前年比184件増の計2172件。うち登山届を提出していたのは全体の2割弱、371件にとどまっている。

     登山届には、当日のルートや下山時間などを記す。提出していれば事故が発生した時に、大まかな居場所が特定されやすくなる。つまり迅速な発見・救助につながるのだ。また、登山届を書く行為は登山計画を省みることにつながり、「計画のどこかに無理はないか」点検できる。登山届は出発前、ネットやファクス、郵送で地元警察に提出しておこう。家族や同僚にも渡しておきたい。

     通常は登山前、地図で地形やルートを確認したり、天候を把握したりする。活火山に登る場合はこれに加え、気象庁の火山情報を見ておきたい。

     気象庁のホームページを開くと、トップページに「火山登山者向けの情報提供ページ」のアイコンが設けられている。これは御嶽山の噴火以前にはなかったものだ。アイコンをクリックすると、各地の活火山が一目で見られるコーナーに誘導される。活火山を示す△にカーソルを合わせると、情報が示される。

     御嶽山の△はオレンジ色になっている。「噴火警戒レベル3(入山規制)」の意味だ。北アルプスの焼岳は白く、レベル1(平常)ということだ。

     注意しなければならないのは「平常」イコール「安全」ではないということ。活火山としての活動が平常というだけで、「安全だ」「噴火しない」と早合点してはいけない。噴火前の御嶽山も「レベル1」だった。さらに、ページをロールダウンすると、オールカラーの地図に、規制範囲や過去の噴火事例、火山防災マップなどが現れる。とても見やすく、親切なデザインになっている。

     焼岳がどう紹介されているか、少々長いが見てみよう。

     <【焼岳】(標高2455m)

    ●安山岩・デイサイトの成層火山で、約4000年前の噴火で下堀沢溶岩流、約2300年前の最新のマグマ噴火で、焼岳円頂丘溶岩、中尾火砕流が発生した。

    ●山頂の溶岩ドームにはいくつもの火口地形があり、明治以降の噴火は水蒸気爆発で、泥流を生じやすい。

    ●1915年(大正4年)の噴火では泥流により大正池が形成された。

    ●最近では、1962年(昭和37年)に水蒸気噴火が発生し、噴石により2名の負傷者がでている>

     焼岳の歴史が簡潔にまとめられている。これを読む限り、マグマ噴火ではなく、水蒸気爆発が起こりそうだと読める。さらに、噴石による負傷者が過去に出ていることも見逃せない。

     我々が焼岳に登頂したのは、10月11日。用心のためヘルメットを持参することにした。2年前の登頂の際は、ヘルメットを使う必要性さえ感じなかった。

     焼岳への登頂ルートは三つ。上高地と中の湯温泉、そして、西穂山荘からの縦走ルートだ。今回は、上高地から登ることにする。

     上高地バスターミナルから梓川河畔を歩き、登山口に。コメツガやダケカンバ、ブナなどがうっそうと茂る樹林帯を歩く。徐々に高度を上げ、ビルの3階分はありそうな長いハシゴを登る(なお冬季はハシゴが撤去されるため、上高地ルートは歩けなくなる)。2時間半で山小屋「焼岳小屋」に到着した。

     前回の訪問ではなかったものが目に入った。無料貸し出しのヘルメットだ。小屋の玄関脇に水色と黒色のものが四つ並んでいた。居合わせたカップルが二つ借りていた。小屋の担当者は「御嶽山の噴火後に置くようにしました。怖がる人もいるので……」と話した。

     私もここでヘルメットを装着し、先を急ぐ。焼岳を仰ぎ見る展望台には10分ほどで到着した。青空を背景に、ゴツゴツとした山肌をさらす焼岳が視界に飛び込んできた。茶色い、巨大な岩石の塊。異世界の風景が視界いっぱいに広がる。噴煙はあちこちから上がり、何となく硫黄臭い。

     「どうやって登るの?」。焼岳をここから見上げると、毎度考えてしまう。よく目をこらすと、青や赤、黄色の服を着た米粒のような登山者が、絶壁に張り付いているように見える。人間の存在はちっぽけだ。

     急峻(きゅうしゅん)な登山道に取り付く。ゴロゴロとした大小の石が転がる。トラックほどの大きさの岩石もかつての噴石だろう。こんなものに直撃されたらひとたまりもない。片側が切れた崖地も随所にある。足が石や砂とともに滑る。落ちたらけがではすまない。慎重に歩みを進めた。

     御嶽山の影響もあり、登山者は少ないのではないかと予想していた。しかし、甘かった。大勢の老若男女が、急で、危険な登山道を行き交っていた。展望台から1時間余り、山頂に到達した。さほど広くない北峰はたくさんの登山者でいっぱい。山頂からこぼれ落ちそうなほどだ。

     前回と違うのは、ヘルメットをかぶったり持参したりしている人がちらほらといること。40代の男性に声をかけた。ヘルメットは持っていないという。「今度来る時はヘルメットを持って来たい。活火山ということは当然意識しています。長居はしないで景色を見たら、さっさと下山します」と語る。登山届の提出を聞くと、「出してきました」という。

     焼岳の山頂から見える北アルプスの雄大な景色は、圧倒的な美しさで見る者の心に迫ってくる。これを見るために、みんなここまで来ているのだ。一方、「今噴火したら……」という思うは常につきまとい、足元の噴煙を見るとゾッとする。狭い山頂から逃れる術はない。

     私たちも長居はせずに、中の湯温泉ルートを下山する。噴煙の上がる岩場から樹林帯へ、そして中の湯温泉へ。2時間余りの道を急ぎ、山旅を終えた。

    長いハシゴを登る。ちょっとした高度感を楽しめる=2014年10月11日午前8時49分、高橋昌紀撮影
    焼岳小屋の無料貸し出しヘルメット=2014年10月11日午前9時19分、小野博宣撮影
    玄関脇に置かれている貸し出しヘルメット=2014年10月11日午前9時21分、小野博宣撮影
    展望台から見る焼岳の威容。まるで月面のような異世界が広がる=2014年10月11日午前9時38分、小野博宣撮影
    さぁ、焼岳山頂へ=2014年10月11日午前9時42分、小野博宣撮影
    山頂を望む。小さく見える登山者の前方に、噴煙が上がる=2014年10月11日午前10時5分、小野博宣撮影
    焼岳北峰の山頂。大勢の登山者でにぎわっている。中央に穂高連峰、右に梓川の蛇行がくっきりと見える=2014年10月11日午前11時45分、小野博宣撮影
    山頂付近の噴煙。途切れることなく噴きだし続けていた=2014年10月11日午前11時40分、小野博宣撮影
    山頂でヘルメットをつけた男性登山者。活火山だけでなく、2500メートル以上の山岳や岩稜帯を通過する時は、通常装備としたい=2014年10月11日午前11時44分、小野博宣撮影

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