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トヨタが新コンセプトで普及強化 「特殊な車から家族みんなの車に」

車椅子に安全ベルトを取り付け、スロープを使って新型エスクァイアの福祉車両に入れる様子=2014年11月20日、神奈川県横須賀市内で

 トヨタ自動車が、福祉車両を普通のファミリーカーのように使うという新コンセプトを打ち出し、販売を強化している。今年1月に新型ノアとヴォクシーの福祉車両で、使い勝手を高める新コンセプトを導入し、10月末に発売した新型エスクァイアにも取り入れた。高齢者や在宅介護が増えながらも、価格の高さなどで敬遠されてきた福祉車両をさまざまな車種で展開し、さらなる普及を目指している。【中村好見】

新コンセプトで機能強化 乗り心地もよく

 福祉車両は、身体が不自由な人が自分で運転する「自操式」と、介護者に乗せてもらう「介護式」−−の二つに大きく分類される。新コンセプトが取り入れられたのは、まず車椅子のまま車両に乗り降りできる介護式の「スロープタイプ」だ。バックドアから出したスロープから車椅子を載せ、固定してそのまま座席の一つとして使う。

新型エスクァイアの福祉車両で、スロープを前倒しにする様子=2014年11月20日、神奈川県横須賀市内で

 この車椅子を固定する場所に、オプションで「後付けシート」を用意した。家族や生活環境が変化して車椅子を使わなくなったら、福祉車両ではなく普通の車として使えるようにするためだ。また、これまでバックドアの開口部を塞ぐように立てて収納していたスロープは前方に倒せるようにし、バックドアからの荷物の出し入れをしやすくした。

 福祉車両としての機能も高めている。スロープを使う際、傾斜が緩やかになるようスイッチ一つで車高の後部を下げるが、これまでの油圧式から空気を用いる方式に変更したことで、乗り心地もよくなった。また、車椅子より大きいストレッチャーや電動車椅子も載せられるようになった。

 こうした機能強化の一方で、生産は通常の車と同じラインで行うため、価格は比較的抑えられたという。例えば新型エスクァイアの福祉車両の場合、標準的な仕様(車椅子1脚積み、2WD、乗車定員7人)でメーカー希望小売価格は302万6000円。追加するオプションなどにもよるが、通常の車と比べて価格はプラス70万円前後だ。また、福祉車両は購入や維持の際、車両の構造や障害の程度によって、税の減免などさまざまな助成制度を受けることができる。

座席の高さを下げ傾斜を付けた専用車椅子を固定した新型エスクァイアの福祉車両=2014年11月20日、神奈川県横須賀市内で

 トヨタは福祉車両だけでなく、乗車時の揺れを軽減して快適さや安全性を高めた専用車椅子も開発した。価格はメーカー希望小売価格19万8000円で、11月末から発売した。女性介護者の力でも、座席を下げて傾斜を付けることができ、同乗者と目線を同じ高さにして車酔いや揺れが軽減できる。シートベルトもしめやすくなった。

今後高まる福祉車両の需要

 トヨタは1981年からメーカー完成車としての福祉車両の販売を始めた。96年からはwelfare(福祉)、well(健康)、welcome(温かく迎える)とcabin(客室)をかけ合わせ、福祉車両を「welcab(ウェルキャブ)」と呼称している。2013年度の福祉車両(普通・小型乗用車)の販売台数2万4366台(日本自動車工業会調べ)のうちトヨタはシェア約7割を占める。ただ、その販売台数はトヨタの国内総販売台数の約1%に過ぎない。

 では、なぜ今、新コンセプトによる福祉車両の開発に力を入れるのか。背景に、75歳以上の後期高齢者人口が急増し、2000年からの25年間で2.5倍になるという予測があるからだ(総務省「国勢調査」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」)。社会保障費を抑制するため、国は在宅介護や在宅医療を進めており、トヨタは今後さらに高齢者の在宅率が上がり、家庭で利用しやすい福祉車両の必要性が高まると考えている。

 しかし、トヨタの試算では、車椅子やつえを使う高齢者500万人に対して、家庭に福祉車両があるのは1%だ。福祉車両の購入を見送った理由を調べたところ、価格の高さを挙げる人が最も多く、続いて「不必要になった」「いつまで使うか分からない」という声が多かったという。そこで、トヨタは生産工場で設備投資がかかるが、販売価格を抑えられる通常の車と同じラインでの福祉車両の生産を進め、普通の車としても使える機能を充実させていくことにした。

 新コンセプトの福祉車両に約4年前から取り組んできた開発責任者の中川茂・製品企画本部主査は、「超高齢社会に自動車メーカーができることは何か。病院や福祉施設に通う以外、家に閉じこもりがちな高齢者の、家族との外出の機会を増やしたいと考えた」と振り返る。その上で、「福祉車両を特殊な車から家族みんなのための車にして普及させ、世界のモデルとなるようなお年寄りが幸せな社会にしたい」と話している。

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