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被災地の現状

仮設住宅集約に課題 重なる転居「また一から」

 東日本大震災でプレハブ仮設住宅を建設した被災3県(岩手、宮城、福島)の39市町村のうち15市町村が毎日新聞のアンケートに、一部を閉鎖して集約を進める方針を示した。空室の増加などで避けられない事態だが、経済的自立が難しい被災者が仮設にとどまり続けるケースも多く、細かなケアが必要になる。【金森崇之、中田博維、柳沢亮、三浦研吾】

     被災3県によると、仮設住宅の入居者は2012年3月の11万6623人をピークに減り続けているが、今年1月末現在、8万1730人が暮らしている。供給戸数5万2378戸の入居率は74%となっている。

     毎日新聞が今年1〜2月、39市町村に実施したアンケートでは、15市町村が集約を「実施する」または「実施に向けて検討」と回答。このうち7市町村が具体的な集約計画を示しており、全て実施されれば185団地(9518戸)が93団地(6356〜6556戸)に減る。理由として(1)仮設用地を地権者に返還する必要がある(2)空室増加に伴うコミュニティー機能低下や防犯上の問題が懸念される−−などを挙げた。「未定」が15自治体、「集約しない」が9自治体だった。

     岩手県大船渡市の場合、計1330戸の仮設住宅の半数以上が小中学校の校庭や民有地に建っている。このため、子どもたちの活動や地権者の住宅再建に支障が出ており、集約が避けられなくなっている。また、宮城県女川町は「入居者減でコミュニティーが希薄になり、閉じこもりや健康悪化が懸念される」として集約方針を決め、実施時期や規模を検討中だ。

     ただし、「仮設から仮設へ」の転居で、望むようなコミュニティーが育まれる保証はない。昨年4月、被災3県の先頭を切って集約計画を発表した岩手県釜石市。入居者の減少などを理由に、17年度上期まで66団地を21団地に集約する方針を掲げた。「桜木町仮設住宅団地」の場合、3月末までに退去を迫られる41世帯のうち、11世帯は同じ団地内に移り、17世帯は他地区の6団地に分かれて移り住む。いずれも市が示した転居先の中から選んだ。7世帯は自立再建し、6世帯は災害公営住宅(復興住宅)に移る。

     自治会長を務める大和田泰佑さん(71)は「次の仮設に移る人が新しい環境に早く慣れるか心配だ。仮設に取り残され、たらい回しにされていると感じさせないよう市の対応が必要だ」と指摘する。

     宮城県東松島市も29団地を6団地程度に集約することを検討中だ。地権者との契約切れで閉鎖が決まった「堰(せき)の内南地区仮設住宅」の住民は10月末までの引っ越し完了を迫られている。1人暮らしの無職、田村けい子さん(65)は被災後、同仮設の仲間に支えられて暮らしてきたが、約500メートル離れた別の仮設に移る。「自分から動いてまた一から人間関係を作り直すのは大変」と不安げだ。来年5月には復興住宅への入居が決まっており、1年足らずの間に2回引っ越ししなければならない。

     隣接する宮城県石巻市では集約の検討は進んでいないが、仮設住宅の自治会でつくる「石巻仮設住宅自治連合推進会」が、仮設間の転居が避けられないと見越して、小規模団地同士でカラオケ大会を開いたり、花見や温泉旅行を企画したりしている。内海徹事務局長は「将来、別の仮設に移った時に知り合いがいれば、溶け込みやすい」と話した。

    入居率74%、支援必要

     仮設住宅の集約は、1995年の阪神大震災では大きな問題にならなかった。震災から3年10カ月時点での仮設住宅の入居率は東日本74%、阪神14%。現地再建が可能で住宅整備が比較的早く進んだ阪神の場合、震災5年で全住民が復興住宅などに移っている。東日本大震災では、復興住宅の整備が遅れていることに加え、仮設入居者の自立支援が大きな課題だ。

     「仮設は出たいけど、遠くの復興住宅には行けない」。仙台市太白区の「あすと長町仮設住宅」に1人で暮らす無職女性(62)はため息をつく。近くの復興住宅(163戸)に応募したが、障害者や70歳以上の高齢者が優先で一般抽選枠は6戸しかなく、落選。他に市街地から10キロ離れた新興住宅地に復興住宅が建ったが、不便で知り合いもいないため応募を見送った。女性は避難生活の長期化で糖尿病と高血圧が悪化し、パートの仕事を辞めた。月に約6万円の年金では足りず、貯金を取り崩して生活している。「この収入でアパート暮らしは難しい」と途方に暮れる。

     仙台市は仮設住宅の集約はしない方針だが、近い将来の大きな課題となる。仮設住宅は無料で住むことができるが、復興住宅では収入などに応じて数千円から数万円の家賃も発生する。

     阪神大震災で兵庫県は、震災4年半で仮設住宅の入居契約を打ち切った。それでも残っていた653世帯(ピーク時の1・4%)に対しては戸別訪問による公営住宅のあっせんなどを続け、経済的困窮などで自立できない世帯には生活保護の申請を促すなどした。同県の初代防災監を務めた斎藤富雄・元副知事(70)は「被災者の置かれた状況は個別に違い、多様なニーズがある。今求められているのは、将来の生活設計を描けるように、行政が一人一人の生活に寄り添いながら粘り強く対応していくことだ」と指摘した。

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