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教育・医療・福祉

学習支援、ニーズに合わせ

NPO法人アスイクの学習支援教室で、子どもたちを見守るボランティアの佐藤健人さん=仙台市若林区の仮設住宅で

 ●対象を低所得者に

     午後7時。仙台市若林区にあるJR東日本の社宅を開放した仮設団地の中で、NPO法人「アスイク」が主催する学習支援教室が始まった。小中学生6人が、日直のかけ声で「よろしくお願いします」とあいさつ。ボランティアの大学生らとマンツーマンでそれぞれの課題に取り組み始めた。

     リーダー役のボランティア、佐藤健人さん(21)=宮城教育大3年=は高校2年の時、仙台市内の自宅で被災。被害はなかったものの、周りの友人たちがボランティアをしていたのに、自分はその機会がなく、もやもやした気持ちが残った。

     大学進学後、アスイクの活動を知り、学習支援に加わった。「教室」には不登校の子らもいて、できる限り一人一人の状況に合わせてサポートしてきた。将来は小学校教員を目指している。「子どもたちと親しくなり、信頼をしてもらえた。学校とNPOでは支援方法が違うが、連携できるようにしたい」と夢を語る。

     アスイクの仮設住宅での学習支援は、ピーク時には6カ所で活動していた。しかし、被災児童の退去で徐々に縮小。来年度も活動を続けるのは、保護者から要望があった、この仮設団地内だけだ。

     代表の大橋雄介さん(34)は「震災前から苦しい生活をしていた人は、大きなダメージを受け今も厳しい状態にある。学校の勉強についていけず、塾代も高くて出せない家庭の子どもたちをサポートしたい」と話し、被災者支援から低所得者支援にスライドして、活動を継続させていくという。震災をきっかけとした取り組みが、元々あった問題の解決につながって、次のステージに進もうとしている。

     ●自然に笑うように

     津波で大きな被害を受けた岩手県山田町。地元中高生らの学びと交流の場「山田町ゾンタハウス」は、波をかぶったものの、焼失をまぬがれたビルを改装して開設された。

     「amongってどういう意味だっけ」「何々の間で」「もう、今考えていたのに」。平日の夕方、2階の自習室をのぞくと、期末試験を控えた山田中の生徒10人ほどが熱心に勉強していた。参考書を開いたり、友達と問題を出し合ったり。

     3年の新倉月菜(るな)さん(15)は「家だとやる気が起きないので、入試まで、ここで勉強したい」と意欲的だ。

     「テストがんばれ」「忘れ物しないでね」。運営責任者の佐藤恵理子さん(51)は帰宅する子供たちに声を掛けていく。開設して間もないころから子供たちを見守ってきたスタッフの鈴木聖一さん(68)は「始まったころはみんなしっかりしなければならないと緊張しっぱなしだった。でも、最近は年ごろらしく、自然に笑うようになった」と振り返る。

    学校帰りにゾンタハウスで自習をする山田中の中学生たち=岩手県山田町で

     震災後しばらくは、避難所や仮設暮らしなど、厳しい環境の変化で、勉強どころではなかった。中でも受験を控えた中学生は落ちついて勉強できる環境を必要としていた。

     そんな子供たちを放課後、明るい笑顔で迎える場所を作りたい。被災地支援をしていたNPO法人こども福祉研究所(東京)は、その思いを、国際NGOの日本支部「国際ゾンタ26地区」から資金提供を受けて、2011年9月に開所した。運営は地域住民が担っている。

     ハウスではおやつを提供する。「ちょっと食べるだけで意欲的になる」と佐藤さん。家では親に反発する生徒も、ふらりとここにやって来て、友人と一緒におやつを食べ、自主的に勉強を始める。1階のストーブの前には、いつも鈴木さんが座っており、家庭や友人関係などの悩みを打ち明ける子もいる。

     ●来年3月に終了

     ゾンタハウスの利用登録者は300人に上る。しかし、来年3月に終了する予定だ。「震災から4年たち、一番支援が必要だった当時の中学生もみな卒業した」。一定の役割を終え、参加者も減少傾向にあるための閉鎖、と佐藤さんは説明する。来春には町内に、図書館機能を備えた「山田町子ども交流センター」も完成。子どもたちの新しい居場所ができる。

     ただ、ハウスに慣れ親しんだ子どもたちに、今後どう対応するかは課題として残る。震災で友人を失ったという新倉さんは「時間がたって震災の記憶は薄れていくけど、(3月11日が)近づくと、ぞわっとする」と打ち明ける。「終了後、また利用したいと申し出があったらどうするかは、考えていきたい」と佐藤さんは言う。

     こども福祉研究所理事長の森田明美東洋大教授は「震災から4年たち、これまで震災のことをうまく話せなかった子どもたちが、発言する力を持ち始めた」と変化を指摘する。その子どもたちの率直な声を行政や大人に届けようと、他のNPO法人などと協力して聞き取り調査を始めている。

     多くのNPOの協力で行われてきた被災児童の支援活動。子どもたちの置かれている状況が変わり、支援のあり方も次の段階に進めることが求められている。【柴沼均】

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