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「世界を操る秘密結社」なのか? 活動盛んなドイツの実情探る

世界的な友愛団体フリーメーソンのドイツの支部幹部シュトラスナー氏。「陰謀論は気にせず、むしろ楽しむ会員も多いですよ」
フリーメーソンの建物には「コンパスと定規」のシンボルマークが見られる
秘密結社「イルミナティ」についての著書もあるドイツの歴史家マルクナー氏

 【ベルリン篠田航一】「世界を操る秘密結社」などと言われることも多い世界的な友愛団体「フリーメーソン」。米国を中心に会員は世界で約600万人とも言われ、欧州にも浸透している。小説や映画では「陰謀論」も渦巻くが、実態はどうなのか。活動が盛んな国の一つ、ドイツの事情を探ってみた。

 ベルリン南西部の高級住宅街に「グランドロッジ・フリーメーソン・ドイツ」との看板がある。重厚なレンガ造りのその邸宅に入ると、グランドマスター(責任者)で独北部キールの医師、アヒム・シュトラスナー博士(67)がにこやかに迎えてくれた。「よく聞かれますが、陰謀とは無縁です。そもそも政治活動はしないので、国際政治に影響力を行使することなどあり得ませんよ」

 あくまで友愛団体で、政治的人脈や商売上の利益を目的にしているわけではないという。入会は原則21歳以上の男性のみだが、近年は女性のためのロッジ(支部)もある。現在、ドイツ国内の会員は約1万5000人。年会費は集会所の維持費など、年間500ユーロ(約6万5000円)前後という。

 外部から分かりにくいのが、その活動内容だ。博士は「博愛的行為を通じ、自身の人間性を磨く」と説明するが、ゴミ拾いをするボランティアなどのように具体的活動が見えにくいため、世間には「謎」と映るようだ。ライオンズ、ロータリークラブのような社会奉仕団体とも違うという。ある会員は「定期的に集まり、語り合う社交クラブというのが実態に近い」と話す。

 シュトラスナー博士は「会員は、自身の人生をポジティブな言動によってより良き方向に変えようとします。しかしそれは自身のためであり、権力や政治のためではありません」と話すが、近年は米国の地方議員らが自身を会員と打ち明けることも多く、政治との距離は難しくなっているという。

 ドイツでは2008年、ケーラー大統領(当時)が会員と面会し、「フリーメーソンは現代社会で非常に重要な意味を持っている」と博愛主義的な考えをたたえた。博士によると、ケーラー氏自身や現在のメルケル首相やガウク大統領は会員ではないという。歴史上の人物では米初代大統領ワシントン、文豪ゲーテ、音楽家モーツァルトらが会員だったとされる。

 入会するには儀式があるが、内容は会員だけの秘密だ。博士は記者が持っていた万年筆を指さし、「あなたにとってそれはただの筆記用具かもしれないが、別の人にとっては芸術品かもしれない。感じることは人によって違う。こうした内容が審査されるとだけ言っておきましょう」と話す。何やら全てが抽象的だ。

 ドイツには、日本でも有名なもう一つの秘密結社がある。18世紀に結成され、原始共産主義的な平等社会を目指した「イルミナティ」だ。「ダ・ヴィンチ・コード」のヒットで知られる米作家ダン・ブラウン氏の小説「天使と悪魔」のモチーフにもなり、フリーメーソンと混同される場合がある。

 歴史家ラインハルト・マルクナー氏はイルミナティについて、「もう現存しない組織ですが、当時はイルミナティで一定の地位を築こうと思えば、まずフリーメーソンに属して徳を積むことが必要でした」と説明し、両者の関係は深かったと話す。だが、フリーメーソン側は「その団体とは無関係」(シュトラスナー博士)との見解だ。

 フリーメーソンはもともと中世の石工(メーソン)の団体が起源と言われている。石造りの建物が多い欧州で、城や教会を造る技術者が集まり、その知識や経験を共有していたメンバーが徐々にサロン化し、17〜18世紀の英国で現在の友愛団体の形になったという。こうした経緯もあり英国が「総本山」とされ、世界中にロッジを持ち、日本にも会員がいる。石工職人の商売道具だったコンパスと定規がシンボルマークだ。

 定期的に集会を開くため、過去には権力者から「体制転覆を謀議する集団」と警戒されることもあった。ドイツでは1930年代、ナチスから活動を禁じられ、多くの会員が強制収容所に送られた。バチカン(ローマ法王庁)も過去に名指しでフリーメーソンを非難していた歴史がある。

 数多くの陰謀論が語られることについては、博士は「インターネット社会の今、あらゆる情報をいちいち気にしていられません」と笑う。むしろそうした映画や小説を楽しむ会員も多いという。


 ■ことば

イルミナティ

 1776年、ドイツ・インゴルシュタット大学の教会法教授アダム・ワイスハウプトが創設した秘密結社。独南部バイエルン地方を中心に広まった。人類の平等など一種の無政府主義的な急進思想が危険視され、84〜85年にかけてバイエルン選帝侯やローマ法王から相次いで活動禁止通告や異端宣言を受けて衰退。創設から約10年で消滅したとされるが、その後も根強く「存続説」「復活説」がささやかれている。

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