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毎日のクリニック

つんく♂さん声帯摘出、喉頭がんとは ヘビースモーカーは要注意

 「一番大事にしてきた声を捨て、生きる道を選びました」。音楽プロデューサーのつんくさん(46)が、喉頭がんの治療のため、声帯を摘出したと公表した。勇気ある選択に共鳴や共感の声が広がっている。が、そもそも喉頭がんとは、どんな病気だろう。専門家に聞いた。【江畑佳明】

    かすれ声続けば検査を/初期は放射線治療有効/全摘後も訓練で発声可

     訪ねたのは、練馬光が丘病院(東京都練馬区)の常勤顧問で頭頸部(とうけいぶ)外科の医師、海老原敏(さとし)さんだ。頭頸部とは喉、鼻、口などを指し、ここにできるがんは「頭頸部がん」と総称される。海老原さんはその第一人者で、過去には「ヒゲの殿下」として親しまれ咽頭(いんとう)がんなどを患った寛仁親王殿下(2012年逝去)の執刀医を務めた。

     まず、どんな人が喉頭がんにかかりやすいのだろう。海老原さんはずばり「ヘビースモーカーは要注意です」と警告する。「喉頭がん患者の95%以上が喫煙者といわれています。しかし、たばこを吸う人が皆、喉頭がんにかかるわけではなく、ヘビースモーカーかどうかの方が重要です。1日数十本もの喫煙を何十年も続けていれば危険性が上がると考えていい」

     男性の発症率は女性の12倍に達し、特に60代以上が顕著という。男性の方が喫煙率が高いことが原因とみられる。たばこを控えるのが最大の予防法のようだ。

     よく飲酒も喉頭がんの原因といわれるが「アルコールだけが引き金になるとは考えにくい。体内に吸収されたアルコールは呼気として気道から出てきますが、その濃度はかなり低いからです。ただ、酒場で大量に飲酒した上、喫煙して大声で騒ぐという環境は、喉頭がんの発症を考えるとよくありませんね」と海老原さん。

     かつては落語家の立川談志さんや、ロック歌手の忌野清志郎さんらが喉頭がんを患った。声をよく使う職業は喉頭がんになりやすいのだろうか。海老原さんは「可能性は否定できませんが、そこは、はっきりしていないんです。例えば、クラシック歌手に喉頭がんが多いとは聞きませんから」

     喉頭がんの発症率は10万人あたり約3人。胃がんや肺がんに比べれば多くないが、後述のように程度によっては声帯を摘出しなければならないかもしれず、その後の人生を大きく左右する。

     「喉頭」の場所を確認しよう。イラストを見てもらいたい。喉頭とは、空気の通り道である「気道」の一部で、いわゆる「のど仏」の中にある。鼻腔(びくう)や口腔(こうくう)から入った空気は、中咽頭を通って喉頭を経由し、気管、肺へと続く。

     喉頭の役割は主に三つある。(1)喉頭のなかに声帯があり、発声をつかさどる(2)空気の通り道を確保する(3)食べ物の誤嚥(ごえん)(誤って気道などに入ること)を防ぐ−−だ。

     海老原さんによると、喉頭がんは部位によって三つに分類される。声帯(声門)にできるがんを「声帯(声門)がん」と呼び、喉頭がんの60〜70%程度がこれにあたる。声門の上にできる「声門上がん」が約20〜30%、「声門下がん」は5%以下だ。

     喉頭がんには兆候がある。海老原さんは「喉頭がんのなかでも声帯がんの初期の症状として、声のかすれがあります。1カ月ぐらいかすれが続いたら、耳鼻咽喉科や頭頸部外科で受診してください。ただ、声帯ポリープや結節の可能性もあり、がんとは限りません。最近では一般の耳鼻科医院でも高性能のファイバースコープを置いてあるところが多く、かすれの原因はほぼ特定できます」と説明する。

     喉頭がんの主な治療法は、放射線照射と、喉頭を部分切除したり全摘出したりする外科手術だ。

     「初期の声帯がんには放射線がよく効くので、60歳以上は放射線治療が望ましい。声を失うことなく、90%近くの患者さんが根治します。しかし、放射線の副作用で5〜20年後に別のがんが出てくる可能性がわずかながらあるので、40〜50代の場合には必要最小限の範囲でがんを切除するのがよいと思います。私のところでは、がんを取った部分に患者さん自身の皮膚や腸をあてがい、喉頭の機能を温存する治療もしています。完全に元通りではありませんが、声は出せるようになります」

     がんが進行していれば、声帯や喉頭の全摘出が必要となり、声は失われる。「喉頭の摘出に伴い、首の下の方に呼吸をするための穴(気管孔)を開けます。その後は各種の発声方法を使って、声を取り戻すリハビリに励むことになります」

     実際には、年齢やがんの進行具合によって治療法やその組み合わせはさまざまだ。抗がん剤の使用も含め、患者の意向を確認しながら決められる。

     喉頭がんの患者団体、NPO法人「日本喉摘者団体連合会」には58の団体が加盟し、発声訓練を行っている。その一つの「銀鈴会」(東京都港区、会員約1100人)では、週3回発声教室を開催。同会所属で発声法をマスターした喉頭摘出者が「発声訓練士」として、ボランティアで「後輩」を指導している。

     銀鈴会会長の松山雅則さんによると、主な発声法は(1)食道発声(2)電動式人工喉頭を使った発声(3)シャント発声−−の三つだ。

     (1)は最も広く行われている。食道に取り込んだ空気を使って「げっぷ」を出す感覚で、お茶などの飲み物を飲みながら練習する。同会の教室では初心者・初級・中級・上級の各クラスがあり、松山さんは「日常会話ができるレベルまで早い人で半年、平均で1年くらいです。上級者はカラオケも歌えるようになりますよ」と話す。

     (2)は電動式機器を首にあて、その音を口の中に導く方法。ひと月程度で習得可能だが、片手が塞がってしまう。人工の声が利用者に敬遠されることもある。(3)は気管と食道の間に気道を作る「シャント手術」を施して、肺の空気を使って発声する。比較的早期に大きな声を出せる利点があるが、器具を装着するので、メンテナンスと取り換えの費用がかかる。

     松山さんは「声を失っても悲観しないで、教室に参加してほしい」と語る。

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