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サンデー毎日発

下村博文文科相インタビュー 明治以来の改革で「入試」が変わる!

下村文科相

 少子化の進行やグローバル化に伴う国際競争の激化など、日本の大学を取り巻く環境は厳しさを増している。そうした中、国はさまざまな教育改革に乗り出している。高等教育はどう変わるのか。大学入試はどうなるのか。下村博文文部科学相に聞いた。

     ──2020年に向けて、大学入試が大きく変わろうとしています。

     今の小学6年生が受験する「大学入学希望者学力評価テスト」がスタートする5年後に向け、高校・大学の接続を絡めた工程表をパッケージで作りました。

     新たな時代の到来が予測された1990年代から教育改革の必要性が叫ばれていましたが、うまくいきませんでした。そうした中で、東京五輪が開催される2020年までの5年間が、改革のためのラストチャンスだと思っています。

     明治時代以来の学校制度は、近代工業化社会を支えるためにうまく機能し、時代の要請に応えてきました。しかし、90年代前後から情報化社会になり、これまでの画一、均一的なものに取って代わる教育が求められてきましたが、十分に対応できませんでした。

     米国の学者は、今の小学1年生が大学を卒業する頃には、65%は現在ある職業とは全く違う仕事に就いているとか、自動化によって今の職業の47%はなくなるだろうと予想しています。これは世界の流れで、日本も、その荒波に抗うことはできないでしょう。

     今後は、更に三つの能力が求められるようになります。一つは課題解決に対して主体的に取り組む能力、二つ目は企画力や創造力などのクリエーティブな能力。三つ目はコンピューターやロボットが発達しても到達できない、優しさや思いやりといったものも含めた人間としての感性です。

     そうした能力を磨かないと、激変する時代の変化に対応できず、きちんとした仕事にも就けなくなってしまう可能性があるというのが、世界の共通認識なのです。ですから、初等教育から高等教育までの一体的な改革で、高度化する人材育成に対応していかなければならないのです。

     ──新しい入試は、どのようなものになりますか。

     現在の大学入試センター試験は、マークシート方式で行われています。また、各大学の試験では、1点刻みで合否が決まってしまいますが、現在、先進国でこのような入試方式を中心にして行っているのは、日本くらいしかありません。米国も欧州も日本のような知識偏重の学力テストには重きを置いていません。面接や小論文などを通して、高校時代をどう過ごしたかを見ているのです。暗記、記憶だけでは測れない能力です。そうしていかなければ、新しい時代の変化についていけないということでしょう。

     そこで、新入試では知識偏重にならないような内容を求めていきます。新入試の枠組みなどについては、15年度中に検討し、3年後には入試の具体的内容を公表する予定です。

     今後は、社会に通用するような能力を育むために、各大学が入学者受け入れ方針であるアドミッション・ポリシーをきちんと定めることが必要です。さらに、大学4年間で学生をどう育て、社会に出していくかをきちんと示していけるようにシフトしていかなければなりません。

     大学入試を変えるということは、高校以下の学習指導要領も変えなくてはいけません。また、入学するのは難しいけれど、“ところてん式”に卒業できるような現在の大学教育は改めなければなりません。出口での質保証を踏まえ、パッケージで改革しようとしているのが、高校と大学の接続を考えた「高大接続」です。

    「大学力」は「国力」そのものだ

     ──各大学が入学してくる学生をどう選抜するのかが重要になってきます。

     そのための法令改正をして、大学に三つのポリシーを義務づけ、明確化させます。アドミッション・ポリシーのほか、どんなふうに学生を育て上げるかというディプロマ・ポリシーと、教育内容を示すカリキュラム・ポリシーです。

     それぞれの大学のアドミッション・ポリシーの見直しも必要です。どういう入学試験が望ましいのかを提示する必要があり、同様にアドミッション・ポリシーも事例集を示す必要があるでしょう。文科省としては、まず個別選抜改革を先行して行う大学の取り組みを推進するため、財政措置の具体策を今夏をメドにとりまとめます。

     マークシートによる学力検査のみで行われる入学者選抜は、1点刻みの得点が出るので、公正・公平で分かりやすいのは事実です。ただ、その物差しだけでは21世紀に必要な人材を育てていくことはできません。抜本的な入試制度改革が求められます。センター試験に代わる新入試や、個別選抜における小論文、面接などを積極的に取り入れていくべきですが、誰が見ても納得できるような選抜方式を大学側が明示する必要があります。

     ──高大接続に絡めると、大学の教員が高校生に教えるような機会も大切ではないでしょうか。そうした試みが一部の高校で行われ、成果を上げています。

     米国では、高校生が大学の単位を取っている例があります。そうすれば、大学入学後に、その部分はやらなくてもよくなります。日本も優秀な生徒や興味・関心がある生徒は、大学の講義を高校のうちから受けられるような取り組みをもっと広げていけばいいと思います。そうすれば、学問的な意欲を高めるための刺激を与えることができます。高校の授業についていけなくて大変だという生徒がいる一方で、物足りない生徒もいます。その生徒のレベルに応じた刺激を与えていったら、もっと面白くなるし、やる気が出てくると思います。

     ──社会のグローバル化を進めるために、昨年秋にスーパーグローバル大学(SGU)が採択されました。

     世界の大学ランキングを見ると、日本の大学は100位以内に2大学くらいしか入っていません。それを10校に増やそうとしています。その一環として、採択したのがSGUです。トップ型、つまり、世界トップ100を目指す大学として13大学、社会のグローバル化をけん引する大学として24大学を採択しました。

     日本の大学は、外国人教員の割合や留学生の割合、英語での論文の割合が非常に少ない。以前、米国でノーベル賞受賞者にお会いしたときに、日本人は優れた論文を書いていると思うが、日本語だけでしか書かれていないので、中身が分からないと言われたことがあります。ほかの国は自国語と同時に英語でも書き、同時発信しています。科学の世界はとっくにグローバル化していますから、国内だけでなんとかなると考えている大学は、世界の中でどんどん地盤沈下し、大学そのものが取り残され、魅力がなくなってしまうでしょう。

     日本にある783の全大学がそうする必要はないですが、SGUに採択された大学くらいは世界から優秀な教授が集められないといけません。大学力は国力そのものですから、一つ一つの大学だけの問題ではなくて、日本全体に影響する問題だと考えています。

    優秀な人材が海外流出する可能性

     ──ところで、来年春の入試から、東大と京大が推薦入試を始めます。

     ノーベル賞受賞者の利根川進さんとお会いしたときに、利根川さんが、こんなことをおっしゃっていました。東大など国内のトップレベルの大学に入ることと比べると、米国のシカゴ大はそれほど難しくはない。しかし、アドミッション・ポリシーが違うということです。米国の大学は18歳段階での暗記力や記憶力を求めるのではなく、その後、どれくらい伸びる可能性があるのかを見ているそうです。

     大学卒業後、社会に出て、更にどのくらい伸びて、どう社会に貢献するのか、そういう物差しの入試です。別にノーベル賞を取れそうな人だけを集めているわけではないですが、結果的には89人の受賞者がいます。21世紀に必要なのはそういう判断基準だと思います。

     ある人に聞いた話ですが、東大出身者で、本当に地頭がいいのは3分の1だそうです。受験予備校が分析したら、東大生の3分の1はどんな試験でも受かるそうです。残りの3分の1は受験テクニックを学んだことで受かる。そして最後の3分の1はそのときの運。もう一回試験をしたら入れ替わるそうです。1点刻みだから、そのくらい運も関係があるんですね。だから上位の3分の1は、先述した三つの能力を身につけようと思ったらできる能力がある。時代の変化に対しても、課題解決に主体的に取り組む力も、企画的なクリエーティブな力もある。

     しかし、東大レベルでも全学生の3分の1です。残り3分の2は指示されなければできない。だから高度経済成長のときには優秀な官僚や、組織人にはなれるのですが、これからの本当に厳しい時代には、学歴は関係ないですね。どこの大学を出たかというより、どんな能力があるのかということなんです。

     そうしたことを考えると、東大は何のための教育をしているのか、何をやっているのかと思ってしまいます。推薦入試で100人を入学させるようですが、あまりに少ないと思います。

     ──その点について、もう少し詳しく教えてください。

     大学受験で地殻変動が起きる可能性を秘めているものとして、国際バカロレアの存在があるからです。世界各国の大学入試資格が取得できる教育プログラムですが、文科省は18年までに全国200高校を国際バカロレアの認定校にすることを目指しています。英語、フランス語以外に日本語でも講義が受けられるようになり、日本の高校でも導入しやすくなります。

     認定校になれば、バカロレアの成績で自動的にどこの大学に入れるかが決まり、優秀な生徒は世界のトップ大学に直接、進学できるようになります。そうなれば、学力トップ層は、東大や京大を選択せず、世界のトップ校を目指すという流れになるかもしれません。可能性を秘めた優秀な人材が海外に流出するようなことになれば、日本はトップレベルの国にはなれなくなります。ですから、今からしっかりとした戦略を練る必要があるんです。

     ──グローバル化の中で、社会が、大学が劇的に変わるインパクトを秘めているということですね。

     今回の大学入試改革は、共通1次試験やセンター試験以来の改革だと取り上げられていますが、もっと以前の、明治に始まった近代工業化の下での学校制度以来のものなんです。ですから、大臣が代わっても、仮に政権交代があったとしても、改革の流れは変わらないという普遍的なものだということを認識していただきたいと思います。

    構成/本誌・柳澤一男、中根正義

    ※サンデー毎日4月5日号より転載

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