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サンデー毎日発

2018年問題を生き残る大学は「こう変わる!」

18歳人口が20万人減 荒ぶる「国際化」の波 2020年入試改革は?

 多くの大学で改革が進んでいる。背景にあるのは、踊り場にある18歳人口が再び減り始める「2018年問題」、さらに新しい高大接続の形が模索され、20年から入試が大きく変わることがある。このような変革期に大学はどのように変わろうとしているのだろうか。

     現在の18歳人口は、1992年以降の急減期を経て、120万人前後で落ち着いている。とはいえ、改革なしには各大学にとって志願者が増えにくい状況が変わったわけではない。難関大も例外ではなく、右のグラフ「主要私立大志願者数推移」を見ると、志願者が最も増えたのは、地球社会共生の学部新設で3845人増となった青山学院大だった。

     上智大は、TEAP(アカデミック英語能力判定試験)型入試の導入で3217人の志願者増。TEAPは上智大と英検が共同で開発した試験。TEAP型入試は、TEAPで一定スコアを取っていれば、独自の英語の試験が課されない2科目入試だ。河合塾教育情報部チーフの富沢弘和さんは言う。

    「TEAPの難易度は上智大が一般試験で課す英語ほど高くないので、上智の一般入試の英語が厳しいと感じる受験生でも受けやすかったと思います」

     慶應義塾大は、試験日を前倒しして早稲田大や東大などの難関大と試験日が離れたことで954人増。一方、大きな動きがなかった早稲田大は志願者が1930人減で、8年連続の減少となった。関西の主要私立大の中で唯一志願者が増えた立命館大は、大阪いばらきキャンパス(大阪府茨木市)を新設し、経営と政策科が移転したことによる。

     このグラフ中、志願者が連続で増えているのは、4年連続の上智大と2年連続の立命館大のみ。ある年に志願者が増加すると、その反動で翌年、敬遠する受験生が増えるためだ。そうした中、グラフにはないが、9年連続で志願者が増えているのが福岡工業大。学長の下村輝夫教授が説明する。

    「就職力の高さに代表される面倒見の良さが要因です。学生の普段の様子や、就職状況を出身校にフィードバックすることで、高校の先生も安心して送り出してくれるのです。教職員が一体となって学生と向き合っていることが、9年連続の志願者増を後押ししています」

     就職状況の良さは、学生に対する支援体制が確立していることを意味する。このような“本質”が評価されている大学でなければ、今後、志願者が集まらないかもしれない。

     というのも、18歳人口は2018年以降、再び減少が始まり、31年には100万人を割り込む。このいわゆる「18年問題」を前にして、これまで志願者獲得に有効だった入試改革が機能しない可能性があるからだ。

     20年から大学入試が激変する。これからの高校での学びは、個別教科の学力だけではなく、それを活用し、積極的に学ぶ姿勢を身につけることが求められる。そうした総合的な学力を判定するために「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」が実施される。

     各大学はこのテストの受験者を対象に、小論文や面接、集団討論など多面的な評価手法で学生を選抜する。このような丁寧な選抜を数多くの入試方式で行うのは難しい。入試の大変革期を前に、成蹊大の経済学部は、来春からセンタープラス多面評価型入試を実施する。センター試験5科目プラスグループ面接で選抜する方式だ。

     大学入学希望者学力評価テストは、現在の大学入試センター試験に相当するが、1点刻みの採点は行わず段階評価になる。それぞれの段階の受験生が多ければ、センター試験の成績だけで合否を決める私立大のセンター方式も成り立たない。こうした新たな高大接続の前提として、学生の受け入れ方針であるアドミッションポリシーの明確化が求められており、大学は本質で勝負することになる。

    有名私立大が続々と外部英語試験を活用

     これからの大学が求める学生像の一つに、グローバル社会で活躍できる人材がある。来春は、今春の上智大のように、外部英語試験を使って「読む、書く、聞く、話す」の4技能を測ろうという動きが強まっている。代々木ゼミナール主幹研究員の坂口幸世さんは、こう話す。

    「定員の一部を割いてグローバル人材を養成しようという外部英語試験の導入は、センター方式、全学部入試に続く、入試方式による第三の大学の多様化策といえます。志願者の数は期待できませんが、4技能に長(た)けた学生を獲得したいというメッセージでしょう」

     外部英語試験は、出願資格として利用する大学や、判定に用いる大学など利用法はさまざま。来春は、青山学院大や法政大、立教大、中京大、南山大、立命館大、関西学院大などで、外部英語試験を活用した入試を実施する。

     私立大が一部の入試方式で外部試験を活用するのに対し、東京海洋大は、海洋科の全区分で外部英語試験のスコア提出を課す。来春はセンター試験の英語も利用可能だが、2年の経過措置後は外部英語試験のスコアのみになる。

     グローバル系の学部新設も進む。学習院大の国際社会は、日本の高校を卒業した学生が4年間でグローバル人材に成長することを目指しカリキュラムが設定されている。入学後、1カ月以上の海外生活が前提だ。

    「大きな改革をしてこなかった学習院大が新設する学部は注目され、志願者が集まると思います」(河合塾の富沢さん)

     桜美林大は2年次後半から全員が半年間の海外留学をするグローバル・コミュニケーション学群を新設する。近畿大の国際も1年次後期から2年次前期にかけて留学が必須。中部では名城大が外国語を新設予定だ。

     グローバル系以外の学部・学科改組も見ておこう。日本大は20年の東京オリンピック・パラリンピック、さらにその先を見据え、競技スポーツの選手や指導者を育成するスポーツ科と危機管理の2学部を新設する。

    「都心に近い三軒茶屋(東京都世田谷区)にできる新キャンパスに設置されるので、受験生の注目度は高いでしょう。危機管理は公務員から一般企業まで幅広い職種を想定しています。スポーツ科はメジャーな大学では唯一都心に設置されるので、どちらも人気が高いでしょう」(代ゼミの坂口さん)

     東京理科大は経営が神楽坂キャンパス(東京都新宿区)に全面移転し、ビジネスエコノミクス学科を新設する。近畿地区では立命館大が大阪いばらきキャンパスに総合心理を新設し、龍谷大は社会の地域福祉と臨床福祉の2学科を現代福祉学科に改組する。いずれも有名大学の新設・改組ということで、人気が高そうだ。

     1981年以降、設置されていなかった医学部(医学科)を新設する東北医科薬科大(現東北薬科大)も注目度が高い。代ゼミの坂口さんは言う。

    「志願倍率が10倍以上の私立大医学部は珍しくなく、東北医科薬科大も人気だと思いますが、近隣の岩手医科大の志願者が減ることはないでしょう。ただ、ダブル合格の際は前者を選ぶケースが増えるので、結果として岩手医科大が入りやすくなりそうです」

    「地元志向」に応える地域創生型学部開設

     国公立大は、2004年に国立法人化され大学独自の裁量が拡大した後も大きな動きは少なかったが、来春は改革を進める大学が多い。河合塾の富沢さんは、こう話す。

    「13年秋に出された国立大学改革プランでは、各大学の機能強化の方向性として、世界最高の教育研究の展開拠点、全国的な教育研究拠点、地域活性化の中核的拠点が示されました。学部改革を中心に、このプランに基づく改革が形になり始めています」

     文科省のスーパーグローバル大学(SGU)創成支援で、世界大学ランキングトップ100入りを目指すタイプAに選定された東大と京大は、来春入試からグローバル人材の原石を募集する。京大は、学部により学力AO型や推薦、後期日程のいずれかを課す特色入試を実施し、東大は留学経験や高い外部英語試験のスコアなどを必要とする推薦入試を実施する。

    「東大は出願のハードルが高いので、志願者はそれほど集まらないでしょう。対して出願しやすい京大は、複数の受験機会を確保するために、多くの受験生が出願すると思います」(代ゼミの坂口さん)

     SGUのタイプB=グローバル化牽引(けんいん)型=に選定された千葉大は、国際教養を新設する。文理融合型の教養系は国立大としては初で、同大の徳久剛史学長は、「千葉大全体のグローバル化を牽引していく学部にしたい」と話している。

     世界的に活躍できるエンジニアの育成を目指し、理工系学部の再編が進む中、東京工業大は日本の大学で初めてとなる、学部と大学院の一貫教育を行う「学院」を設置する。これにより、これまでの3学部23学科・6研究科(45専攻)を6学院に集約する。SGUのタイプAに選定されている同大は、世界トップ10に入るリサーチユニバーシティーを目指す。名古屋工業大は6年一貫の創造工学教育課程を新設予定だ。

     地域活性化の中核拠点を目指し、教育学部の教員養成を目的としない、いわゆるゼロ免課程を改組した地域創生型学部が多くの国立大にできる。来春は宇都宮大や愛媛大、宮崎大などが新設予定だ。

    「地元志向から地域に残りたいと考える受験生にとって、こうした学部は格好の受け皿になると思います」(河合塾の富沢さん)

     地域の活性化という点では、来春から、山口東京理科大が公立大学化する。学費が安くなるため、多くの志願者が集まりそうだ。

     少子化による18年問題、さらにその2年後の高大接続の大転換期を前に、多くの大学が動き出している。来年の受験生にとっても、影響が大きい改革が目白押しなので、志望校の状況はこまめに確認したい。

    大学通信・井沢秀

    (「サンデー毎日」2015年6月14日号より転載。主な大学の学部・学科の改組、入試変更点をまとめた表は誌面を参照してください)

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