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幸せの学び

<その131> 天職への回り道=城島徹

ごとうゆきさんと自作の天使

 老眼鏡をかけ、ドリンクを飲むユーモラスな天使が舞い降りて、風呂上がりのお客さんの目を楽しませる−−。そんな雰囲気のクレイドール(粘土の人形)が展示された東京・高円寺の銭湯ギャラリーを訪ね、この「おっさん」スタイルの天使を作った女性アーティスト、ごとうゆきさん(48)に「天職にたどりつくまでの物語」を聞いた。

     生まれ育ったのは、瀬戸内海に淡路島を望む兵庫県明石市。看護師への夢を周囲に反対されたため、進んだのはあこがれの男性と同じ関西学院大学法学部政治学科。ところが、その人には彼女がいると知って落ち込む……。青春は序章から暗雲がたれこめていた。

     体育会合気道部に入ると、同期の1年生が練習で事故死する悲劇に遭遇したが、苦悩を共有する仲間、真摯(しんし)な姿勢の先輩たちと強い絆で結ばれ、人生の礎となる。卒論「日ソサケマス漁業交渉」を仕上げ、社会に飛び出したのはバブル真っ盛りの1989年だった。

     大阪で不動産会社に就職し、マンション販売、リフォーム物件の仲介などの仕事を経て神戸の設計事務所に移り、2級建築士の資格を得てインテリアデザイナーとして活躍するも、95年の阪神大震災でまたまた転職を余儀なくされた。

     次の勤め先はマンションリフォーム専門会社で、設計、施工と、やりがいのある仕事についたが、バブル崩壊のあおりで会社が倒産。そのうえ離婚が重なり、公私ともども「すべてを失った」。30歳を超えての孤独な日々。まさに「背水の陣」だった。

     それまで美術には無縁の人生だったが、イラストレーターの兄から描くコツを教わり、絵の世界に飛び込んだ。意外にも作品が売れ、知人から「東京なら仕事がある」と言われ、2004年4月、「青春18きっぷ」を握りしめ、夜行列車で上京し、文化住宅に入居した。

     電気のない部屋に段ボールで寝る「ゼロからの出発」だったが、乳幼児の仕草を観察しているうち創作に熱中。赤ちゃんと手話でコミュニケーションを図る「ベビーサイン」の絵本作りで表現力を磨き、東日本大震災の被災地含め各地で作品展を開くまでになった。

     銭湯「小杉湯」のギャラリーでは、お風呂での自然な姿をイメージした天使の人形18点が上丸健さんのイラストとのコラボで展示され、「かわいらしい」と評判を呼んだ。そして今秋、故郷・明石市で写真家との大がかりなコラボ展が開催されるという。

     「人生は何がどうなるかわからない。遠回りしながら天職を見つけた私なので、試行錯誤中の若い人に何かアドバイスしてあげたいですね」。遅咲きの芸術家の感慨だ。【城島徹】

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