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<安保法案強行採決>テレビ局報道、扱いに差大きく

 安全保障関連法案が16日、衆院を通過した。最大のヤマ場となった15日の平和安全法制特別委員会での強行採決について、テレビ各局は同日夜の報道番組で報じた。いずれも各党の反応や国会周辺のデモなどを取り上げたが、局によって時間や扱い方に差が見られた。【丸山進、須藤唯哉】

    テレビ朝日

     最も長時間取り上げたのは、テレビ朝日の「報道ステーション」(午後10時24分〜)。国会前抗議デモの生中継を何度も盛り込み、全部で1時間16分の番組の半分近い約37分を割いた。怒号が飛び交う特別委の強行採決の様子を約5分にわたって伝え、臨場感あふれる作りにした。

     番組では、現役自衛官の妻が「不安もあるが頑張って送り出していきたい」と話し、太平洋戦争でニューギニアの戦場を体験した男性(92)が「このまま突き進むと間違いなく日本は、また来た道をたどることになる」と語った。古舘伊知郎キャスターは「1ミリでも戦争に近づかない、殺さない、殺されないという視点で。そこをぶれてはいけない」と決意表明した。

    TBS

     TBSの「NEWS23」(午後10時54分〜)も59分の番組のうち約29分をかけて取り上げた。国会審議の模様や街頭での賛否のほか、「自民党は憲法違反政党になった」(社会学者の上野千鶴子氏)、「今の自民党は権力者が党全体を牛耳り、党内民主主義がない」(村山富市元首相)といった意見など憲法学者や作家ら有識者の主張を幅広く紹介した。

     番組が自民党国会議員402人を対象に実施した安保関連法案に関するアンケートで、5人しか回答しなかったと報じた。党本部が回答しないよう指示したこと、こうした党の対応に二階俊博総務会長が疑問を示した点にも触れた。岸井成格(しげただ)キャスターは「憲法学者や国民(の声)に耳を貸さないことは『権力の暴走』と言わざるを得ない」と断じた。

    フジテレビ

     フジテレビは「あしたのニュース」(午後11時半〜)のトップで、スポーツニュースを除く約22分間のうち、安保関連を約7分報じた。

     元日本兵2人のインタビューで法案への異なる意見を紹介した。99歳の男性が「(後方支援と言うが)戦争経験者として前も後ろもない」と懸念を示す一方、93歳の男性は「米国だけが日本のために死に、日本は嫌だという同盟関係はあり得ない」と容認した。大島由香里キャスターは「国民が納得できる審議と説明をしてほしい」と結んだ。

    日本テレビ

     唯一トップニュースとしなかった日本テレビの「NEWS ZERO」(午後11時〜)。冒頭で強行採決を速報的に短く伝えた後、猛暑や台風接近などの気象関連ニュースを約5分扱った。安保関連の本格的な報道はその次で、約6分間だった。特別委の映像では採決に踏み切った浜田靖一委員長の言葉と、民主党の辻元清美氏の「お願いだからやめて」との訴えを何度も字幕で並べた。

     村尾信尚(のぶたか)キャスターは「国民の理解が進んでいないと総理も言っている。参院でもっと議論を掘り下げてほしい」と述べる一方で、「国民は野党の考える安全保障政策も知りたい。安全保障環境をどう捉えているのか、個別的自衛権だけで本当に日本が守れるかの議論も聞きたい」と各局で唯一、野党にも注文を付けた。

    NHK

     NHKは「NEWS7」(午後7時〜)30分間のうち約10分、「ニュースウオッチ9」(午後9時〜)1時間のうち約17分を使い、ともにトップで報じた。「ニュースウオッチ9」では特別委審議の模様を詳報し、与野党5党の質問と、安倍晋三首相の答弁を交互に紹介した。採決後の各党反応の後にも首相の談話を紹介し、他局より首相の言葉を手厚く取り上げた。河野憲治キャスターは「安倍首相自身、国民の理解が進んでいないのも事実と認めている。なぜ採決に踏み切ったのか。国民は丁寧な説明を聞きたいと感じているように思う」と論じた。

    NHK国会中継、有無に関心

     安保関連法案を巡って、NHKの国会中継の有無が関心を集めた。

     NHKは15日、法案が衆院特別委で強行採決された模様を正午のニュースを延長して生中継した。しかし、同日午前に安倍晋三首相が出席して開かれた特別委の締めくくり総括質疑は中継しなかった。

     NHK広報局によると、国会中継は全会派がそろう審議を対象に、国民的な関心が高い重要案件を扱う委員会質疑であること▽各会派が一致して委員会開催に合意すること−−などを総合的に判断して放送するか決めている。15日は委員会に全会派がそろうかどうか、直前まではっきりしなかった。

     また法案が審議入りした5月26日の衆院本会議も中継しなかった。広報局は「本会議を放送するのは原則として、首相の施政方針や所信表明など政府演説と、それに対する代表質問がある場合」とした。

     一方、法案が採決された今月16日の衆院本会議は、当初予定していたトーク番組を変更して生中継した。広報局は「国民的な関心が高い案件かどうかなどを総合的に判断した」と説明した。

    社説 全国紙、論調分かれる 地方紙、目立つ批判

     新聞は、安保関連法案の衆院通過をどう伝えたか。特別委での強行採決を受けた全国紙5紙の16日朝刊社説は、5月の法案閣議決定に続いて論調が分かれた。毎日新聞と朝日新聞が政府・与党を厳しく批判したのに対し、法案に理解を示す読売新聞と日本経済新聞は採決の混乱に関し与野党双方に注文を付けた。産経新聞は与党単独の採決を妥当とした。

     毎日と朝日は通常2本掲載する社説を、安保法案1本に絞って大きく取り上げた。毎日は「与党が『数』の力で法案を押し通した。審議が不十分なまま採決を強行したことを、強く非難する」とし「日本の民主主義は健全に機能しているのだろうか」と疑問を投げかけた。朝日は「多数のおごりと無責任が極まった暴挙である」「法案をこのまま成立させ、『多数派が絶対』という安倍政権の誤った民主主義観を追認することはできない」と強い表現で政権を批判した。

     読売は「政府・与党は、国民に分かりやすく丁寧な説明を続ける必要がある。野党にも、批判一辺倒でなく、平和確保の具体策を示すなどの建設的な対応が求められる」と書いた。日経は「政治の合意形成力の低下を印象付けた」とした上で「審議時間の大半が合憲か違憲かの押し問答だった。与野党とも国会の役割をよく考え直してほしい」と双方に苦言を呈した。産経は「審議を経た法案について、賛否の結論を出すのは国会の基本的な役割である」として「外部有識者の意見を聴くなどの手続きも踏んでおり、採決は妥当なものだ」と主張した。

     地方紙の16日朝刊は強行採決を批判する社説が目立った。沖縄タイムスは「憲法を破壊する暴挙だ」とし、琉球新報も「民意顧みぬ政府の野蛮 廃案にして審判を仰げ」との見出しを掲げた。一方、北国新聞(石川県)は「理解得るには時間かかる」と批判の声にも理解を示しつつ、法案成立を求めた。【青島顕】

    安保法案に関する、16日全国紙朝刊社説の見出し

     毎日新聞=民主主義揺るがす強行

     朝日新聞=戦後の歩み 覆す暴挙

     読売新聞=首相は丁寧な説明を継続せよ

     日本経済新聞=合意形成力の低下示した採決

     産経新聞=与党の単独可決は妥当だ

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