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小悪党の小遣い稼ぎが重なる米国の資本主義
傑作。ニューヨークという街を「タクシードライバー」が捉えたように、ロサンゼルスを、そしてアメリカを知るために欠かせない映画です。
ルー・ブルームは金網やマンホールの蓋(ふた)を盗んでは転売する小悪党。そのブルームがたまたま通りかかった交通事故の現場で、ビデオカメラを撮影する二人連れに出会う。聞けば、事故の映像をテレビに売りつけるのが仕事だとのこと。ヒントを得たブルームはビデオカメラを買い、警察の無線を傍受して、事件現場の映像をテレビ局に持ち込みます。交通事故や傷害事件の生々しい映像は視聴率を上げるので、テレビ局が買ってくれるわけですね。でも、生々しい映像なんて容易には入手できませんから、事件を撮影するのではなく、自分で事件を引き起こすことになる。一種の「やらせ」ですが、この場合は殺人にもなるわけです。
最初の十数分を観(み)ただけで、観客はこんな筋書きを予想するでしょうし、実際そんな展開になります。ただ、悪くはないけど、これだけでは驚きもない。ビリー・ワイルダーの「地獄の英雄」ではカーク・ダグラス演じる新聞記者が、鉱山の落盤事故をスクープに仕立てるために、助けることのできた犠牲者を見殺しにしました。「ネットワーク」だと、視聴率のために人まで殺しちゃいます。モラルの吹き飛んだマスメディアって、映…
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