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漂う民〜同時進行ルポ

堂々めぐり アリさん、別の街に(11月19日・ドイツ南部シュツットガルト)

シュツットガルトの一時滞在施設前で笑顔を見せるアフガン人のハッサン・アボシさん=19日、坂口裕彦撮影

 ドイツで難民として新たな生活を目指すアフガニスタン人のアリ・バグリさん(30)と、独南部シュツットガルトで19日に会うことになった。待ち合わせ場所は、アリさんのいる市内の一時収容施設。プリペイド携帯電話の通話料を使い果たしたアリさんは「住所は後ほど連絡します」と、妻のタヘリー・カゼミさん(28)の携帯電話で伝えてきた。

     19日午前。アリさんが携帯電話のショートメッセージで送ってきた住所と、パソコンの地図検索画面をひたすら見比べた。

     いくら探しても、ぴたりと合う場所が見つからない。難民らの入る施設は市内に90カ所もあり、住所がないとまず見つけられない。

     アリさんに電話して「目印」を尋ねたが、「2000人はいる。シュツットガルト市内の大きな古い施設」と繰り返すだけで、らちがあかない。

     市内で最も大きな施設は、中心部から車で15分ほどの展示場だ。収容人数は約2000人。とにかく現場に行ってから考えよう。そう判断して、タクシーに飛び乗った。

     予想に反して、展示場は真新しかった。土地勘のないアリさんと私は、電話で要領を得ない堂々めぐりの会話を続けた。最後には、互いが近くにいたドイツ人に電話を替わってもらった。

     「残念ながら、彼のいる施設はここではない。南へ70キロほど離れたメスシュテッテンにある施設だ」

     電話を替わってくれた女性の一言に脱力した。シュツットガルトではなかったのだ。

     「本当にすみません。誤解していました」。申し訳なさそうに話すアリさんを責めることはできない。地域の主要都市シュツットガルトの名を必死で連呼し、慣れないドイツ語表記を伝えようとしてくれていたのだ。

     展示場から出てきたアフガン人のハッサン・アボシさん(16)は「ドイツはシャワーのお湯が温かい。食事も無料だ。やはり、ここに住みたい」。約1カ月かけてたどりついたドイツに着いて1週間だという。どこかほっとした様子だった。施設からの外出も許されているようだ。電話越しに聞いたアリさんの声の高ぶりにどこか似ている。

     だが、市街地に戻る車に乗った私の気分は晴れなかった。ドイツ政府がアリさんの難民申請を認めたとしても、言葉も通じない異郷で新しい生活を切り開くのは並大抵のことではない。アリさんは、険しい道のりの入り口に立っただけではないか。そんな考えに襲われたからだ。

     ともあれアリさんの居場所は分かった。明日はメスシュテッテンに行くしかない。【シュツットガルト坂口裕彦】

    坂口裕彦

    1998年4月入社。山口、阪神支局を経て、2005年に政治部。首相官邸や自民、公明両党、外務、防衛、厚生労働省などを担当した。13年に外信部に移り、14年4月から現職。ウィーンを拠点に、中東欧や国際原子力機関(IAEA)などの動きをウォッチ。ウクライナ危機の現場も取材している。

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