メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

Listening

<記者の目>視覚障害者向けプロ野球解説放送=屋代尚則(大阪学芸部)

東京キー局も積極的に

 プロ野球公式試合のテレビ生中継で、視覚障害者に向けた「解説放送」が今季も実施され、注目を集めた。ドラマなどで演者の動作を説明する要領で、選手の動きや画面のテロップに出た文字などをアナウンサーらが詳しく説明。放送を聞いた視覚障害者からは「どんな場面が映されているかが分かりやすく、(視覚障害のない)家族と一緒に楽しめた」などと評価する声が多く聞かれた。視覚障害者だけでなく、目が見えにくくなった高齢者も楽しむことができる解説放送が東京のキー局などにも広がってほしい。

     9月21日、セ・リーグ公式戦の中日−巨人戦(ナゴヤドーム)。CBCテレビ(名古屋市)は、主音声とは別に、副音声で実況のアナウンサーと元プロの解説者による、中部地区で初となるプロ野球の解説放送を行った。四回裏、中日の攻撃。副音声の角上(かくがみ)清司アナ(48)は、和田一浩選手の打席で次のように実況した。

     「和田、背番号は5番です。(走者は)二塁、一塁、ワンアウト。1点を追うドラゴンズの四回の裏です。マウンド上はジャイアンツ、若い田口(麗斗(かずと)投手)。第1球を投げました。胸元外れた。最近5試合は5打数4安打、打率8割。画面左下に(テロップが)表示されています」

     この間、主音声のアナらは和田選手の過去の実績などを話題にし、凡退までカウントやテロップの内容にはほとんど触れなかった。一方、副音声は「ピンク地に黒で『お願いかっとばせ 打って和田』という布を持っている」などと観客席の様子も伝えた。

    イメージ浮かぶ、背番号や観客席

     テレビ番組では、主音声放送のほか、解説放送や外国語など副音声での放送が行われる場合がある。CBCはプロ野球の解説放送に先立ち、名古屋市視覚障害者協会副会長の橋井正喜さん(64)にアドバイスを依頼した。橋井さんは弱視だったが、10年ほど前に視力を失っている。橋井さんは「例えば、全盲の人は『背番号○番の○○選手』と覚えることもあるので、選手の背番号も伝えてほしい」などと助言。実際の放送を聞いた橋井さんは「(現役最後の試合だった)小笠原(道大)選手が苦笑いをしています、など表情や仕草も説明してくれて、よりイメージが湧いた」と話した。

     橋井さんによると、全盲の妻も普段からテレビを楽しんでいるといい、「解説放送は画面に何が映っているかが分かり、妻と一緒に楽しめる」と話す。

     総務省は在京、在阪、名古屋の広域局などが、2017年度までに全番組の約1割で副音声による解説放送を行うことを目標とする指針を公表している。プロ野球中継の解説放送は、朝日放送(ABC、大阪市)が昨年、全国で初めて実施。同局は、ドラマのほか、「新婚さんいらっしゃい!」「探偵!ナイトスクープ」などのバラエティー番組でも解説放送を実施してきた。

     ABCは昨年9月の阪神戦で、主音声のアナらの解説の合間に副音声のアナが説明する方式をとったが、「主音声のアナが話し出すタイミングが分からず難しかった」という。このため、今年6月の中継では、副音声のアナが単独で話す方式に変更。同7月と合わせ、計2回の解説放送を行った。CBCの1回と合わせ、今年は3試合の解説放送が実施されたことになる。

     障害者向けのメディアの情報発信について、障害者施設で長年の勤務経験がある京都光華女子大の佐々木勝一教授(60)は「施設には虎ファンが多く、野球を楽しみたい気持ちが強かった。障害者の生きる力を高めるためにも、楽しむ手段があることは重要」と評価する。

     また、交通事故で視力を失った岡田太丞(たいすけ)さん(50)=兵庫県西宮市=も、ABCの解説放送を聞いて「(視覚障害のない)妻と一緒にテレビを楽しめた。視覚障害者に優しい放送は目が見えにくくなった高齢者にも優しいはず」と解説放送の充実を期待する。

    費用はかかるが工夫して克服を

     ただ、費用の問題もある。ABCは副音声中継のため、試合があった阪神甲子園球場に主音声と同規模の放送席を設け、主音声と同じだけの人件費や機材費がかかったという。一方、CBCは球場でなく自局内にスタジオを作り、アナと解説者はテレビモニターを見ながら説明した。同局は「費用を抑えるため、解説者を置かず、アナのみで中継することも含め検討していかなくてはいけない」という。

     工夫によって克服できる課題はあるはずだ。解説放送の普及が、多くの人が楽しめる放送のあり方を考えるきっかけになればと願う。

    毎日新聞のアカウント

    話題の記事

    アクセスランキング

    毎時01分更新

    1. 誤って高圧幹線を切断 大阪・高槻で病院など停電
    2. 特集ワイド 「アベ政治ノー」訴え続ける 木内みどりさん 「言うべきこと」萎縮無用
    3. 小室圭さんが謝罪コメント発表 母の金銭トラブルで経緯説明
    4. 工事図面に高圧幹線記載なく 切断で停電 大阪・高槻
    5. 女子中学生が意識不明 殺人未遂容疑で母親を逮捕 前橋

    編集部のオススメ記事

    のマークについて

    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです