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<記者の目>ダブル選圧勝 大阪維新の会=小山由宇(大阪社会部)

「対話型」前面に改革を 小山由宇(よしたか)

 大阪以外の人は驚いたのではないか。大阪府知事・大阪市長のダブル選は、地域政党「大阪維新の会」が自民推薦候補を寄せ付けず圧勝した。対立相手をたたきのめす橋下徹代表(大阪市長)の政治手法は住民投票での「大阪都構想」の否決で限界を示し、全国的には大阪維新系の国政政党も失速している。それでも、大阪維新を押し上げたのは府民の改革への渇望だ。橋下流の転換に自ら言及したことも奏功したとみられる。

     ここで提案したい。他党との対立を繰り返しては、改革は継続できない。橋下市長の任期満了(12月)での引退を機に、大阪維新は「対話型」にはっきりと路線変更すべきだ。新たな姿で臨めば、国政にも改革の息吹を届けられるかもしれない。改革の要求は、社会問題を多く抱える大阪で顕在化したが、全国どこにでもあると思うからだ。

     選挙戦を通し、橋下氏は「僕はやり過ぎた部分がある。次は、粘り強く相手と合意する政治家が必要だ」と繰り返した。それに呼応し、後継者の吉村洋文次期市長も「橋下市長を乗り越え、政治を前に進める」と強調した。大阪維新が自己変革を模索しているのは明らかだった。

    財政健全化への府民の期待強く

     住民投票で橋下流が行き詰まったのが理由だ。反発した非維新の全政党が「反対」で団結、都構想は否決された。その後も橋下氏の対立手法は変わらず、府市の課題は暗礁に乗り上げていた。私がダブル選で取材した有権者の何人かは「橋下さんのやり方はいけない」と口をそろえた。自民推薦候補も「民主主義を破壊する独裁者」「不毛な対立を生んだ」と厳しい非難を浴びせた。拒否反応が広がり、大阪維新は橋下流の克服に迫られていたと言える。

     一方で、改革継続への期待はそこかしこで感じた。都構想に反対した知人も「府と大阪市の二重行政解消をはじめとする改革はしてほしい」と語った。現状の大阪への不安があるからという。

     かつて東京と並ぶ商都だった大阪は、新興国の台頭などで地盤沈下が続く。生活保護受給率は3・41%(今年3月)と、47都道府県でワースト。バブル期の放漫財政による公債費(借金返済)や生活保護費などの福祉負担が重く、全国20政令市トップの税収(人口1人当たり)を誇る大阪市でも財政状況は厳しい。高いポテンシャルを有しながらのこの体たらくだ。

     2011年に市長になった橋下氏はその不満を巧みにくみ取り、財政健全化を軸とする改革に着手した。橋下氏はたびたび同僚議員に「新興政党は財政再建に取り組まないとだめ」とメールで指示している。既成政党は支持者離れを招きかねない歳出削減に尻込みするが、大阪維新はひるまずに向き合っている。

     私も、施策自体は大部分を肯定的に捉えている。橋下氏が断行した高齢者への交通費助成の見直しなどは、増加する福祉支出を抑えるために必要だったろう。公務員人件費の削減を加速させたのも、時代の要請だった。都構想が目指す「二重行政解消」は大阪府市の協議で解消できると考えるが、もう一つの仕掛けには注目している。大阪市の法人関連税収を府(都)に移し、広域行政の財源に充てるとの考え方だ。大阪市内の企業の通勤圏は隣接市にも及ぶ。ゆえに市の法人関連税収を隣接市などの交通インフラ整備などにも活用する、との発想だ。「受益と負担」の地理的範囲を一致させる点で意義深い。納税者は、行政サービスが税負担に見合っているかを判断しやすくなり、地方自治への意識の高まりが期待できる。政府でもたびたび「法人関連税収の大都市への偏在」は問題になる。国の税制度に一石を投じる可能性もある。

    対立から脱却し実績を全国へ

     橋下氏が明言した対話への路線変更を口約束で終わらせてはならない。対立型では日本維新の会や維新の党を分裂させて数を減らしたように、改革への道筋は遠のく。府市両議会でも大阪維新は過半数を持たない。都構想再挑戦に議決は必要だが、多数派工作のカギになる公明党府議も選挙後、「直近の民意は我々だ、とごり押しされると厳しい」と警戒した。多少の意見の違いは包摂しなければ、前に進めない。

     最近の国政は、アベノミクスで歳出削減への圧力が減ったからか、改革意欲に乏しいと感じる。再選された松井一郎知事は「改革を全国に広げたい」と街頭で意気込みを語っていた。既成政党は「維新ブームは大阪の特異現象」と高をくくるだろう。だが、「課題」の先進地での実績を引っさげ、新しい大阪維新で挑むならば、改革の広がりは十分にありえる。

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