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勝間和代のクロストーク

feat.瀧波ユカリ/172 英語学習はどこまで必要か?

イラスト・瀧波ユカリ

 英語学習がブームです。インターネットで外国とつながって安く学習する英会話学校の各種サービスがありますし、フィリピンのセブ島に英語留学する日本人は、この5年で、年間4000人から4万人と10倍になりました。

     背景には、一部の企業が英語を「社内公用語」化するなど、「英語が話せないとビジネスや生活面でトレンドから乗り遅れる」というある種の強迫観念があると思われます。さらに、自分が話せないため子どもには苦労させまいと、幼少期から英会話学校に通わせたり、あえてインターナショナルスクールに入学させたりする親も増えています。

     冷静に考えると、日本の生活で英語はどこまで必要でしょうか? 私はダイエットと同じく、一種の「コンプレックス商法」に近くなっていると懸念しています。

     言語には、コミュニケーションツールとして、また思考ツールとしての両面があります。英語学習を熱心にするあまり、「ハーフリンガル」という問題が一部で生じています。これは、二つの言語を読み書きできるが、学習時間が分断されてしまうため、どちらの語彙(ごい)もネーティブレベルに達せず、思考を深めることを妨げ、他の学習分野にも支障を来すことです。

     私たち日本人は、幸いなことに日本で生まれ育つ限り、思考ツールとして日本語を使う材料には事欠きません。あらゆる場面で日本語しか使われていませんから、思考は複数の言語を使う国に比べて深くなります。また、日本人同士のコミュニケーションも「あうんの呼吸」といわれるように、言わなくても分かるという文化が醸成されます。

     一方、コミュニケーションとしての側面では、日本語は世界の中で通じる人が限られるため、英語を習得した方が、ビジネス面でも、情報収集の面でも有利になることは間違いありません。

     ただし、最近は少なくとも書き物については不完全ながら自動翻訳が発達して、ある程度の意思は通じるようになってきました。音声の自動翻訳も、実用レベルに達するのはすぐでしょう。

     なかなか英語がうまくならない人の指導に当たっている人に尋ねると、英語そのものより、コミュニケーションや思考ツールとしての日本語をうまく使いこなせていないため、英語もうまくならないそうです。

     私の提案は「必要以上に英語ができないことを不安がる必要はない。むしろ、コミュニケーションや思考ツールとして、日本語のスキルを磨き、その延長上に英語を位置づけよう」というものです。

     日本語がしっかりしていない幼少期の英語の早期教育に関しては、なじむ程度は構いませんが、日本語が混乱するほどの過度な教育には反対です。大人も子どももむやみに英語を学ぼうとするのではなく、「将来、どの程度のコミュニケーションを誰と取りたいのか」というゴールを定めて、そこに向けたカリキュラムを組むべきでしょう。言語能力そのものはむしろ、日本語で磨くべきだと考えます。それは、さまざまな書き物を読み、自分の考えを文章にまとめることの繰り返しでしかできません。英語も同様で、「多読」「多聴」「多弁」の延長に習得があります。

     必要ないものにお金と時間を使うことはないし、逆に、本当に英語がいるなら日本語を身に着けたのと同様のプロセスを経なければなりません。多くの人がなかなか英語を実用レベルにまでできない理由は、時間の投資が少なすぎるのです。

     自分の時間をどこまで投資するかは自分で決めるべきであり、ブームだからと週に1、2時間ずつ勉強しても、上達は望めないと考えています。そして、時間が使えないのであれば、専門家や情報技術をもっと頼ることを考えた方がいいと思っています。

     あなたが英語学習についてこれまでどう取り組んできて、どこまで習得できて、今後は何をしたいのか、そして、英語学習ブームについてどう考えているのか、ご意見をお待ちしています。(経済評論家)

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