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余録

暴風雨の夜、紀伊半島の突端に当たる…

 暴風雨の夜、紀伊半島の突端に当たる和歌山県串本町(くしもとちょう)沖でトルコの軍艦が座礁、転覆した。125年前のことだ。きのう全国公開された映画「海難1890」では、高波にさらわれる危険を顧みず、岸壁に流れ着く船員を救助する住民たちの姿が描かれている▲住民たちは傷だらけの船員を懸命に手当てし、衣服や食料を分け与えたそうだ。犠牲者は約500人にのぼったが、69人の命が救われた。この住民の無償の善意が、日本とトルコとの友好の原点になったと言われる▲同様の善意は、それ以前の史実にも表れている。和歌山の海難事故より3世紀近く前の1609年、1隻の軍用帆船が房総半島の太平洋側にある千葉県御宿町(おんじゅくまち)沖で嵐に見舞われ、難破した。当時スペイン領だったフィリピンの臨時総督ら373人が、同じくスペイン領だったメキシコに帰国する途中だった▲海岸に漂着した船員を小さな漁村の住民が救出した。冷え切った体を海女が体温で温めるなど献身的に介抱し、総督はじめ317人を助けた。それを契機にメキシコとの交流が進み、御宿町には近年、駐日大使ら政府要人も訪れている▲目の当たりにした他人の危機を見過ごせない。そうした善意は人間の普遍的な本性であるかもしれないが、行動につなげるのは簡単ではない。私たちの先人は、それを実践していたのだ▲今、中東やアフリカの紛争地を逃れた難民のうねりが欧州に向かう。パリ同時多発テロの衝撃が、その門戸を一段と狭めかねない情勢である。眼前の人道危機に対して私たちができることは何か。想像力を働かせ、史実の先人たちに倣いたい。

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