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にゅーす360度

紙面審査委員会から 輸出が農業を救う?

 <こういう視点も>

     農林水産省が8日、今年1〜10月の農林水産物の輸出額が前年同期比23・2%増の6029億円に上ったと発表しました。新聞各紙は9日朝刊で、年間では昨年の6117億円を上回って過去最高になることが確実だと報じました。

     環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の大筋合意を受け、政府は11月25日に国内対策をまとめましたが、農産物輸出の拡大も柱の一つになっています。TPPで農産物の輸入が増えても、一方で輸出を増やせば国内農業を維持でき「成長産業」に変えることも可能というわけです。対策では「2020年までに輸出額1兆円」という政府目標の前倒しも打ち出されました。

     この間のメディアの報道ぶりは、政府の方針に対し課題を指摘しつつも、おおむね肯定的です。近年の農産物輸出の順調な伸びは、目指す方向性が間違っていないことを証明しているように見えます。

     しかし、ここで立ち止まって考えたいことがあります。

     農産物輸出の増加は、農家の努力、政策の後押し、海外の和食ブームなどが要因でしょうが、円安効果も無視できません。このまま一本調子で増え続けるかは疑問です。また、伸びが期待されるのは富裕層向けなどの高付加価値品のようですが、需要には量的な限界もありそうです。輸出が農業の衰退を若干カバーする効果はあっても、過大な期待はできないでしょう。

     もう一つ、食文化の問題があります。農産物の輸出は文化の輸出でもあり、輸入する側にとっては文化の輸入です。限度を超えると昔からの食文化が失われるかもしれません。善しあしは別ですが、日本では戦後、食生活が洋風化しコメの消費が減りました。

     日本の食文化が海外に受け入れられるのは喜ばしい。でも、もしも欧米の人たちがパンをやめて毎日すしや天ぷらを食べるようになったら、不自然でうれしくありません。輸出に陰の側面もあることは頭に置いておきたいと思います。

     農産物輸出について、時には少し視点を変えた記事があってもいいのではないでしょうか。【位川一郎】


     東京本社最終版を基に論評/毎週土曜日に掲載

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