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ノバルティス社も否認 初公判

 製薬会社ノバルティスファーマの降圧剤バルサルタン(商品名ディオバン)を巡る臨床試験データ改ざん事件で、薬事法(現医薬品医療機器法)違反(虚偽広告)に問われた元社員、白橋伸雄被告(64)は16日、東京地裁(辻川靖夫裁判長)であった初公判で「改ざんしていない。統計に関わったが、医師の研究を手伝っただけ」と起訴内容を否認し、無罪を主張した。法人としてのノ社も「白橋被告による不正は確認できない」と否認した。

     逮捕から約1年半が経過した今月になって保釈された白橋被告は黒のスーツ姿で出廷した。起訴内容について「症例の水増しはしていない」と用意した書面を読み上げ、改ざんを明確に否定した。

     ノ社は出廷した執行役員が「臨床研究に対する信頼を大きく損ない、社会的責任を痛感している」と陳謝した。しかし「社内調査などで真相解明に努めたが、白橋被告による改ざんは確認できず、当社が刑事罰を負う根拠はない」と主張した。

     起訴状によると、白橋被告はノ社の担当部長としてバルサルタンの効果を検証した京都府立医大の臨床試験でデータ解析を担当。医師らが2011年と12年に発表した論文で、別の降圧剤を服用した患者グループの脳卒中の発症例を水増しするなど、バルサルタンの効果が高くなるようデータを改ざんし、虚偽に基づく論文を海外誌に投稿させたとされる。従業員の違法行為で会社の刑事責任を問う両罰規定に基づき、ノ社も起訴された。【山下俊輔】

    事件の背景

     白橋被告が問われているのは、京都府立医大の臨床試験の論文を虚偽広告に使ったとする薬事法違反だが、これはバルサルタンを巡る疑惑の一部でしかない。

     捜査に立ちはだかったのは時効の壁だ。バルサルタンの「特別な効果」を探る臨床試験は京都府立医大のほか、東京慈恵会医大、滋賀医大、千葉大、名古屋大で実施され、名大を除く4大学はデータの不正操作の可能性を指摘。白橋被告は、滋賀医大以外の4大学の試験に関与していた。

     しかし宣伝効果が特に大きかったとされる慈恵医大が07年に発表した論文は、14年2月に東京地検特捜部が強制捜査に入った時点で、3年の公訴時効が既に成立。京都府立医大が09年に発表して広告に多用された主論文も同様だった。

     ノ社は5大学に11億円もの奨学寄付金を提供し、大半の大学でこの情報は隠されていた。各大学の調査委員会は、論文のデータ改ざんに研究者が関与した可能性にも言及しており、未解明の疑惑は残る。

     一方、この事件をきっかけに、研究不正防止に向けた動きも進みつつある。

     新薬の承認を目指す臨床試験(治験)では、途中のデータチェックなどが法律で義務付けられている。一連の疑惑を受け、厚生労働省は広告への使用が想定される臨床試験なども規制対象とする新たな法案をまとめ、来年の通常国会に提出する方針だ。

     研究者と企業との利害にまつわる「利益相反」問題への意識も高まった。製薬業界は奨学寄付金などの資金提供状況の公開を始めるなど透明化を進めているが、事件を受けて厚労省は新法による公開義務化を検討している。【河内敏康、八田浩輔】

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