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余録

「柚子も秋の青柚が熟しきって黄色くなり…

 「柚子(ゆず)も秋の青柚(あおゆ)が熟しきって黄色くなり、その酸味と芳香は私にとって欠かせないものとなる」。師走の柚子をたたえたのは作家、池波(いけなみ)正(しょう)太郎(たろう)だった。「柚子だけは贅沢(ぜいたく)させてくれ」と家人に頼んで、毎食、魚介や漬物にかけて楽しんだ▲その「味と映画の歳時記」によれば、大石(おおいし)内蔵助(くらのすけ)も柚子が大好物だった。大石夫人は秋に熟した柚子をきざみ、みそと合わせてすったものに柿の肉を加えて柚子みそを作った。内蔵助の晩酌はこの一品だったと、作家は浅野家(あさのけ)城(じょう)代家老(だいがろう)の質素な暮らしをしのんでいる▲自身も「柚子をかけた大根おろしの一品だけでも酒がのめる」と書いているから筋金入りである。その筆の描くところ、漬物に柚子をかけただけでもいかにも洗練されたごちそうに感じられる。もちろん鍋料理のポン酢や薬味でも、柚子の香りがうれしい師走である▲今年の冬至は22日、柚子湯の習慣は江戸時代の銭湯に始まるといわれる。池波正太郎も湯屋の湯けむりの香りにうっとりした子ども時代を振り返っている。もしかしたら、黄色く丸い柚子とその芳香を一陽来復(いちようらいふく)の湯治(とうじ)に結びつけた知恵者の湯屋がいたのかもしれない▲もともと秋冬に限らず和食の酸味、香りづけに欠かせぬ柚子だった。九州の柚子胡(こ)椒(しょう)が全国に広がり、塩柚子など新調味料も人気となった。ネットでレシピを検索すれば、柚子を用いた創作料理のアイデアが目白押しだ。ちょっとした柚子ルネサンスといえようか▲その風味、西欧の料理界でも有名シェフに注目され、世界的にも料理に用いられるようになった。泉下(せんか)の柚子好きたちもわが意を得たりと喜んでいよう。

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