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余録

社会鍋と言えば…

 社会鍋(しゃかいなべ)と言えば、たすき掛けの制帽・制服にラッパ、そして三脚につるされた鉄鍋だ。時間を巻き戻したようなたたずまいが、なぜか年末の街にはよく似合う。100年を超す伝統の力だろう▲「だいたんに銀一片を社会鍋」(飯田蛇笏(いいだだこつ))。俳句の季語にもなる救世軍(きゅうせいぐん)の社会鍋は、1894年に米国で失業者の救済目的に生まれたクリスマスケトルを祖先に持つ。日本では明治末期に「年越し雑煮(ぞうに)」の鍋として街頭募金が始まり、「集金鍋」「慈善鍋」の呼び名を経て1921(大正10)年から社会鍋に落ち着いた▲「社会鍋にご協力ください」。84歳の添田信義(そえだのぶよし)さんは先週も東京・銀座の松屋(まつや)前に立った。活動歴は終戦直後から70年近くに及ぶ。低音域の重い管楽器を吹いてきたが、5年前に足を骨折して自分で運べなくなった。「廊下で倒れてね。老化による廊下現象だよ」と陽気に語る▲生活困窮者を直接支援する社会鍋は東京だけで11カ所、全国40カ所以上に広がる。ただ、近ごろは素性の怪しい募金団体が現れて、とばっちりを受けたりもする。東京・新宿駅の西口地下では「苦情が来るので救世軍だけを特別扱いはできない」と活動許可が下りなくなった▲寄付文化の層が厚くはない日本だが、ふるさと納税はうなぎ登りだ。豪華な返礼品がもらえて、税金も安くなるというので、今年は昨年の4倍近くに額が膨らむらしい。「お得感」ばかりが伝わると、老舗の社会鍋は分が悪い▲銀座で1万円札を小さく折りたたんで鍋に入れる年配の女性がいた。名前が紹介されるわけではない。税金の控除もない。見返りとは無縁の心が鍋を温める。

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