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横里 隆・評『あこがれ』川上未映子・著

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“ぼく”と世界との距離を縮めて消してくれる旅に出よう

◆『あこがれ』川上未映子・著(新潮社/税抜き1500円)

 モノとモノの間には距離がある。人と人の間にも距離がある。思いと思いの間にも、過去の出来事と今この瞬間の間にも距離がある。そう、私たちは世界のあらゆるものに距離を感じながら生きている。距離を縮めたいと願っても容易に叶(かな)わないものがたくさんあって、私たちはそれらに“憧れ”を抱く。

 幼い頃は、大きくなったら立派な大人になって、ほしいものを手に入れて……と、憧れとの距離をなくしていけると信じていた。実際はどうだろう。未(いま)だに社会や世界との距離をうまく詰められず、手の届かない憧れの前で立ちつくす自分に気付くばかりだ。だからこそ、本書『あこがれ』は胸の奥に沁(し)みてくる。

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