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余録

4層に5万人を収容したローマのコロッセオには…

 4層に5万人を収容したローマのコロッセオには火山灰を使った古代コンクリートが使われていた。鉄骨もない紀元1世紀の巨大建造物が中世の石材流用をしのいで今日に姿をとどめているのは、このコンクリートの強度のおかげといわれる▲いわば石に永遠を刻む文明の古代における一つの頂点をなすローマの円形闘技場だった。かたや、めぐる時の中で生まれ変わりをくり返す木の文明だが、奇跡的に1300年以上の時をくぐりぬけた世界遺産もある。むろん世界最古の木造建築、法隆寺のことである▲この二つの建築文化の融合はどんな姿になるのか。3層のスタンドに6万人を収容する「木と緑のスタジアム」をキャッチフレーズにし、法隆寺の五重塔の垂木(たるき)を思わせる水平ラインのひさしを特徴とした新国立競技場の「A案」だった。政府はその採用を決定した▲誰しもびっくりした経費膨張で異例の白紙撤回に追い込まれた2020年東京五輪・パラリンピックの主会場、新国立競技場の建設計画である。新計画の選考はA、B二つの提案について行われたが、建築家の隈研吾(くまけんご)氏、大成建設、梓(あずさ)設計(せっけい)が提示した案に落ち着いた▲周辺の景観にそぐわぬ威圧感が不評を呼んだ当初案に比べ、高さも大幅に抑えた新計画である。「家の作りようは夏を旨(むね)とすべし」(徒然草(つれづれぐさ))で、スタンドに風を通していく構造も和風だろう。ともかくも白紙の上に工費、工期の制約をクリアするプランが記された▲だがすべては紙の上の構想を石や木を用いて形にするこれからの手際(てぎわ)にかかる。国民の不信と怒りの的となった風通しの悪い差配(さはい)は二度と許されない。

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