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余録

「古釘箱の中でひじきが喧嘩するよう…

 「古釘箱(ふるくぎばこ)の中でひじきが喧嘩(けんか)するよう」というたとえがある。古釘やひじきをばらまいたような下手な文字へのけなし文句で、「ひじきの行列」という言い方もある。黒くて細長くて真ん中がちょっと膨らんだところが毛筆の手跡(しゅせき)を思わせる▲ひじきは漢字だと「鹿尾菜」と書く。これは漢名で、和名はひじきを干した様子が杉の枝のようなので「干杉藻(ひすぎも)」、それがひじきもになったという説がある。平安時代の和歌にも出てくるが、もっと昔から食べられてきた▲江戸時代に庶民の食事のおかずを相撲番付にしたものがある。目刺しいわしと八杯豆腐(はっぱいどうふ)を大関とするこの番付でひじきの白あえは前頭三枚目となっている。おかずのバラエティーが様変わりした今日も、ひじきの前頭上位という番付はあまり変わっていない気がする▲もっとも今の人気は鉄分や食物繊維などの栄養によるところが大きい。なのに現在流通している干しひじきの多くは製造に使う釜が鉄製からステンレス製に変わったため含有鉄分が9割も減っているという。文部科学省の日本食品標準成分表の改訂で明らかになった▲学校給食や栄養指導に用いるこの成分表である。5年ぶりの改訂では食品数を300品目以上増やし、新たに発芽玄米(はつがげんまい)やアマニ油など健康志向を反映した食品や、刺し身などの日本食も取り入れた。また糖尿病の対策に主な食品の炭水化物量を正確に算定したという▲問題の干しひじきは釜の材質により鉄分量を書き分けた。将来は製品への表示を求める声も上がろう。鉄分が足りないといって、古釘箱に入れて喧嘩させるのは衛生上許されないので、念のため。

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