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地域の誇り命のトンネル 手掘り国内最長 新潟

中山トンネル(左)と中山隧道=長岡市山古志東竹沢で

 新潟県長岡市と魚沼市を結ぶ日本最長の手掘りトンネル「中山隧道(ずいどう)」(全長877メートル)。冬になると雪で孤立する旧山古志村小松倉集落の住民らが1933年から16年の歳月をかけ、自らツルハシで掘り抜いた「命のトンネル」だ。半世紀にわたって住民の生活を支えたトンネルは現在、その役目を終えているが、世紀の大工事は地域の誇りとなっている。

    2015年10月、長岡市などが実施した中山隧道の内部調査。坑内は崩落防止のため金網で覆われているが、ツルハシの掘り跡が確認できる=同市提供

     かつての小松倉集落では、日用品の買い出しなどで約12キロ離れた旧小出町に行くには、中山峠を越える必要があった。峠道は4キロ以上もあり、周辺は数メートルの雪が降り積もる豪雪地帯。医者もいなかったため、冬に急病人が出れば、病人を背負って命がけで峠越えをしなければならなかった。集落内には以前からトンネルを求める声があり、32年には県への陳情も試みたが、援助は得られなかった。

     「自分たちで掘ろう」。集落内で次第にそうした声が高まるようになる。だが、どれくらいの時間がかかるのか、想像もつかない大事業だった。

     「自分たちの代で終わらなければ、次の世代に引き継げばいい」

    「技術も金もない。無謀だ」

     約60世帯の小さな集落は、賛成派と反対派で真っ二つに割れた。意見はまとまらないまま、33年11月、集落の3分の2程度の賛成派が資金と人手を出し合い、トンネルを掘り始めた。

     測量士の協力も得て、農閑期の冬を中心に男たちはツルハシやシャベルで土を掘り、女たちは摩耗した道具を峠越えして鍛冶屋まで運んだ。崖や斜面に井戸を掘る「横井戸掘り」の技術はあったが、掘削はなかなか進まなかったという。集落内ではその間も対立は深まり、「反対派はトンネルが完成しても使わせない」などとする血判状まで作られた。

     太平洋戦争の影響で、43〜47年には作業を一時中断したが、その後再開。県への陳情もようやく実って一部補助金が出るようになり、人手を雇い、反対側からも掘り始めたことで、作業は急ピッチに進んだ。

     49年5月、ついにトンネルが貫通。戦争をはさんで16年の歳月が流れていたこともあり、賛成派と反対派の垣根は取り払われ、集落全体が歓喜に沸いたという。

     完成した隧道は、車1台がようやく通れるほどの幅だったが、その後、半世紀にわたり、生活道路として利用。98年に新トンネルが完成した際には、隧道を封鎖する案も出たが、住民の強い要望もあって保存された。

     2004年の中越地震では、旧山古志村は大きな被害を受けたが、隧道内は一部が崩落したのみで、ほぼ無傷だったという。その後、震災前に完成していた隧道の難工事を再現した記録映画「掘るまいか」(03年)が全国各地でチャリティー上映され、「震災に負けない村民の忍耐強さに通ずる」として、大きな話題を呼んだ。

     隧道は現在、崩落の危険性があるとして通行止めとなっている。長岡市は16年度から本格的な保全調査を進め、5月ごろには小松倉側から約70メートル地点までを見学できるよう内部を補強するという。

     小松倉集落の住民らで作る「中山隧道保存会」事務局の小川喜太郎さん(65)は「隧道の話になると、住民たちは親世代の活躍や誇りを口にする。高齢化する地域の大きな支えになっている」と語る。隧道は本来の役目を終えた今も、人々に勇気と感動を与え続けている。【真野敏幸】

    中山隧道

     旧山古志村小松倉集落の住民らの手によって1949年に完成したトンネル。全長877メートル、幅約2メートル、高さ約2.5メートルで、手掘りとしては国内最長。81年に国道認定され、98年、隣に中山トンネル(全長913メートル)が完成するまで利用された。以前は通り抜けできたが、長岡市の調査で崩落の危険性があることが分かり、2015年4月から通行止めとなっている。積雪の多い中越地域には、他にも多くの手掘りトンネルが残っている。

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