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2016年を考える 人口減少と経済 タブーにも「挑戦」の時

 アベノミクスが始まり3年がたつ。その「三本の矢」という処方箋の基となった経済診断は、長引くデフレのせいで低迷が続いている、というものだった。

     では、次のデータをどのように受け止めるべきだろうか。

     2000〜13年の経済成長率を、日米で比較したものだ。国内総生産(GDP)そのものの伸び率ではなく、働き手世代(15〜64歳)1人あたりで計算した成長率を比べると、米国の約11%に対し、日本は20%超もあった。国際決済銀行の報告書などで紹介されている。

    現役世代の急減

     生産活動を担う現役世代一人一人のパフォーマンスは、米国をはるかにしのいでいたことになる。にもかかわらず、日本全体が伸び悩んだ背景には、この世代の数の急減があった。00年以降の13年、15〜64歳の人口は米国で12・9%増加したが、日本では8・5%も減少した。

     働き手世代は、消費の担い手でもある。この層が世界に類を見ない速度で縮小していくことにより経済が受ける影響は、専門家の間で指摘されてきたが、政府は正面から取り組んでこなかった。物価下落こそが病巣だとして、大規模な金融緩和やバラマキの景気対策を重ねた。

     だが安倍政権も、ようやく人口の側面に光を当て始めたようだ。将来にわたって1億人を維持するため、合計特殊出生率を現在の1・4程度から1・8に引き上げるという目標を、アベノミクス第2弾に掲げた。

     問題は、出生率1・8の達成が現実的か、そして、仮に実現した場合、それによって1億人の人口維持ができるのか、である。答えはいずれも「ノー」だろう。

     1・8は「希望出生率」と呼ばれるものだ。「結婚できたらいいな」「子どもは何人欲しいな」という希望が完全にかなうことを前提にしている。しかも、完全に希望がかなっても、1・8では1億人維持に足りない。14年2月に内閣府が発表した試算によると、出生率が30年に、第2次ベビーブーム期に匹敵する2・07まで回復し、維持できた場合で、60年の人口は9800万人だ。

     それがどうした、との声もあろう。総人口が1億人を大きく下回っても豊かな国はたくさんある、と。

     日本特有の問題があることを忘れてはならない。単に人口が減るだけでなく、人口の構造が変わっているのである。働き手世代が減る一方、高齢者の比率は増え続ける。現状のままだと、今の20歳が高齢者の仲間入りをする60年には、65歳以上の1人を現役世代1・3人で支えなければならない計算になる。

     今でも国の借金がGDPの2倍以上ある日本だ。借金を加速度的に増やす政策は、もはやとれない。女性の労働参加、高齢者の再雇用促進、少子化対策、ロボットなどの技術革新−−。全て追求すべきだが、それでも間に合わないだろう。

     大幅な社会保障の負担増に給付の削減といった手段もあり得るが、それでは働き手も高齢者も疲弊し、生活の質や経済の活力が損なわれかねない。少子化も一段と進むだろう。

     長年タブー視されてきた「政策としての外国人の受け入れ」という選択肢も視野に入れる時ではないか。

    外国人の力を生かす

     外国人労働者や移民の受け入れには、批判や反対がいまだに根強い。日本らしさが失われる、犯罪が増える、さらに最近ではテロリストが入ってくる、といった不安が理由として挙げられよう。

     しかし、労働力不足が深刻化する中、現実には外国人の流入は徐々に進んでいる。「外国人技能実習生」が実際には低賃金労働力として利用され、失踪したり、不法就労者となったりするケースが頻発しているが、こうした現状を放置する方が、かえって地域社会とのトラブルや治安悪化につながりかねない。

     日本にも人口の16%以上が外国人という町がある。群馬県大泉町だ。

     同町など外国出身の居住者が多い自治体が集まり先月、浜松市で「外国人集住都市会議」が開かれた。外国人=出稼ぎというとらえ方ではなく、人口減少社会の中で「外国人市民の多様性をどう生かすかを考える段階に入った」(鈴木康友浜松市長)との発信がなされた。戦略的に政策を推進する司令塔として、国に「外国人庁」のような機関の新設を求める「浜松宣言」で締めくくった。

     働き手世代、特に若者の人口減少が問題なのは、社会保障制度が維持できなくなるといった負担の論理からだけではない。イノベーションの担い手として、新しい消費トレンドの先導役として、経済のダイナミズムの支え手として、彼らの層が厚くなることが極めて重要だ。人材は多様であるほど、可能性も高まる。

     「未来へと果敢に挑戦する1年とする」−−。年頭記者会見で安倍晋三首相は「挑戦」を連呼した。人口問題ほど、果敢な挑戦が求められているものはない。

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