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2016年を考える 日本の安全保障

同盟のジレンマ直視を

集団的自衛権の行使を認めた安全保障関連法は、今年3月末に施行され、いよいよ運用の段階に入る。

     安保関連法の主眼は、中国の軍拡や海洋進出、北朝鮮の核・ミサイル開発に対応するため、自衛隊の活動を拡大して米軍との一体化を進め、日米同盟を強化することにある。

     日米同盟の重要性は言うまでもないが、今年は新法制のもとで同盟のあり方が問われる局面が、いろいろと出てくるだろう。

    安保法制は運用段階へ

     国と国との同盟関係を考えたとき、「見捨てられる恐れ」と「巻き込まれる恐れ」という相反する二つのリスクがつきまとうものだ。

     紛争などが起きた場合、同盟国に手を差し伸べなければ、頼りにならないと見なされ、同盟国から「見捨てられる恐れ」が生じる。かといって、それを避けようとして積極的に手を貸せば、同盟国の戦いに「巻き込まれる恐れ」が出てくる。

     「同盟のジレンマ」といわれる問題である。日本も他の国々と同様にこのジレンマから逃れられない。

     肝心なのは、そのはざまで均衡をとりながら、いかにして多数の国民が納得する答えを見つけ出し、国の安全保障政策を組み立てるかだ。昨年の通常国会では、こうした安全保障の議論は深まらなかった。

     「見捨てられる恐れ」とは、対米支援を拡充して日米同盟を強化しなければ、米国は日本を見捨てて、いざという時に日本を助けてくれないかもしれない、というものだ。

     同盟の信頼関係を傷つけかねないため、政府の立場で言う人は少ないが、安倍政権が安保関連法を推進した根底にはこうした考え方がある。自民党幹部らも主張した。わかりやすく言えば、次のようなことだ。

     米国は「我々は世界の警察官ではない」と言い、かつてほど世界の秩序維持に積極的ではない。ところが、中国の海洋進出は急ピッチで進んでいる。沖縄県・尖閣諸島を含む東シナ海で、日中間に不測の事態が起きた場合、米国を関与させるためには、もっと積極的に米軍を支援する体制を整える必要がある−−。

     今や日本にとってより深刻なのは、戦争に巻き込まれる恐れよりも、米国から見捨てられる恐れ、ということなのだろう。

     国際情勢は年明け早々、めまぐるしく動いている。

     北朝鮮は核実験を強行し、日本を含む北東アジアや国際社会の安全保障環境を揺さぶっている。サウジアラビアはイランとの国交を断絶し、中東情勢は混迷の度を深めている。

     中国や北朝鮮など日本周辺の情勢に対応するため、日米同盟を強化するのはわかる。北朝鮮の問題については、日米韓の連携が不可欠であり、日本防衛のためにも必要な役割を果たすべきだ。

     だが、中国に関しては、いたずらに警戒心を高め、米国から見捨てられないように、地球規模で対米支援を強化するという考え方は、国民が納得できるようなバランスが取れたものだろうか。

     そこには、日中の対話によって信頼を醸成し、緊張を緩和するという外交面での発想があまりに乏しい。

    根本的な議論深めたい

     米中はさまざまな分野で対立しながらも、毎年、閣僚らが戦略対話を重ねている。日本も中国と重層的な関係を築く努力をもっとすべきだ。

     「巻き込まれる恐れ」についても、国民の間には、中東情勢への対応などで米国からの要請を断り切れず、戦争に巻き込まれるのではないか、という懸念が根強くある。

     安倍晋三首相は、巻き込まれる恐れについて「無責任な批判」「レッテル貼り」と言うが、同盟の強化によって、むしろジレンマは深まると考えるべきだ。

     安保関連法の強行成立は、憲法の規範性、立憲主義、民主主義のあり方など多くのものを傷つけた。

     民主など野党5党は、この国会に廃止法案を出す準備を進めている。

     私たちも、憲法違反の疑いが濃く地理的な歯止めもない集団的自衛権の行使を、そのまま容認するわけにはいかない。

     だが、現実に安保関連法は間もなく施行される。政府は、夏の参院選への影響を避けるため、秋以降に法律にもとづく新しい任務を自衛隊に追加する予定だ。

     安保関連法はメニューが多岐にわたるため、国連平和維持活動(PKO)での自衛隊の任務拡大をはじめ、国会でほとんど議論されないまま法改正が行われたものも多い。

     法律を運用するのは政府だが、それを監視するのは国民の代表である国会の役目だ。いざという時に自衛隊を派遣するかどうか、自衛隊に新たな任務を認めるか否か、といった問題を、政府の「総合的な判断」だけに任せるわけにはいかない。

     新法制のもと、同盟のジレンマのはざまで、日本として米国や国際社会とどう関わっていくのか、根本的な議論をもっと深める必要がある。

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