メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

中国と世界 秩序に取り込む道探れ

 新年早々、中国の通貨安、株安が世界市場を揺るがせている。米中の対立が続く南シナ海では中国機が人工島に造成された空港への試験飛行を繰り返した。一方、北朝鮮の新たな核実験をめぐっては中国が影響力を行使することに期待が高まる。善きにつけ、あしきにつけ、中国の存在感を示すニュースが相次ぐ。

     習近平(しゅう・きんぺい)国家主席は国民に向けた新年のあいさつで「国際社会は中国の声に耳を傾けている」と述べた。中国抜きでは事が進まない時代になったことは確かだが、グローバルに広がり始めた中国の戦略は時に現在の国際秩序に対する挑戦にも映る。

    中国の行動が大切だ

     米国主導の現在の秩序を基本にいかに中国を取り込んでいくか。これが中長期的な世界的課題になるだろう。ただ、パワーシフトがあまりに急激に起きているため、中国も国際社会も十分に対応できていない面がある。現状を正確に把握しながら、知恵を出していく必要がある。

     まず、中国自身が現行秩序に加わっていく姿勢を示すべきだ。習主席は昨年9月の訪米時に「現在の国際システムの参加者、建設者、貢献者であると同時に受益者だ。改革を求めているが、別の物を作ろうという意味ではない」と述べた。問題は言葉どおりの行動が伴うかだ。

     中国の軍備拡張や東シナ海や南シナ海への海洋進出は米国主導で守られてきた「航行の自由」への挑戦に見える。高度成長の時代が終わる中、依然として軍事費の大幅増を続けていたのではますます疑念が深まるだろう。

     現行秩序は自由や民主主義、人権の尊重、法の支配、市場経済といった普遍的価値に支えられている。中国は市場経済化を成し遂げ、法治国家建設を国策に掲げる。しかし、習政権発足以降、普遍的価値を唱えたり、人権擁護を求めたりする弁護士らが相次いで取り締まられている。

     貿易大国となることで経済成長を果たした中国は経済面での現行秩序の最大の受益者の一つだろう。しかし、国内政治や安全保障面では現行秩序との隔たりが大きい。この溝を埋める努力がなければ、中国と国際社会との摩擦は簡単にはなくならない。習政権が一層の経済成長を優先に安定した国際環境を求めるなら、政治改革にも踏み出すべきだろう。

     もちろん、日米など国際社会の側も中国の台頭を冷静に受け止め、中国と共存できる秩序のあり方を模索する必要があるだろう。国際通貨基金(IMF)が国際通貨としての人民元の地位を認めたのは好例だが、中国が打ち出した陸と海の「二つのシルクロード」構想やアジアインフラ投資銀行(AIIB)をめぐっては国際社会の側の対応が分かれた。大国になった中国が外に打って出ようとするのは自然な姿だ。十分な検討なしに秩序への挑戦と拒否するとしたら、共存はおぼつかない。

     中国は国連安保理常任理事国として国連平和維持活動(PKO)への積極参加を続けている。思惑はあろうが、国益を前提に国際戦略を考えるのはどの国も同じだ。中国が国際貢献に積極的な姿勢を示すのなら歓迎できる。北朝鮮の核開発を止めるにも中国の力は欠かせない。

    日本も長期的視野で

     中国の国内総生産(GDP)は2000年には日本の4分の1に過ぎなかったが、IMFの推計では昨年は日本の2.77倍になった。17年には3倍に達する。1人当たりGDPはなお日本の4分の1にとどまるが、00年にはわずか3%弱だったことを考えると、変化は速い。

     日本国内ではまだまだ「遅れた中国」のイメージが強いだろうが、変化を直視しなければ、認識と現実のギャップが広がってしまう。巨大さゆえの認識の難しさもある。

     例えば、「爆買い」の中国人旅行客の急増を見れば、日本だけに殺到している印象を受ける人も多いだろうが、1億人を超える海外旅行者全体から見れば、5%程度に過ぎない。

     尖閣諸島問題や歴史問題を抱え、日本の対中認識は厳しい。欧州各国が相次いでAIIBへの参加を決めたのとは対照的だが、日本では中国の経済停滞を望むような声さえ聞かれるのはいかがなものか。

     中国経済の先行きに対する不安感が増しているのは確かだが、製造業の不振に比べ、サービスや消費の伸びは堅調という。地域によっても景気動向にばらつきがある。中国経済の動向は日本にも大きな影響を与える。正確な分析は日本自身の政策運営のために不可欠だ。

     安全保障面でも各国の認識には差がある。しかし、南シナ海での緊張の間にも中国軍と共同演習を続ける米国やオーストラリアと比べ、日中の防衛交流は滞っている。外交努力も続ける必要がある。

     昨年来、日中関係は基本的に改善基調にある。相互信頼の回復を優先課題に、「引っ越しのできない隣人」との長期的な関係を念頭に置いた対話も進めてほしい。

    関連記事

    毎日新聞のアカウント

    話題の記事

    アクセスランキング

    毎時01分更新

    1. 老後破産 “元凶”は「住宅」にあり! 松谷明彦・政策研究大学院大名誉教授
    2. 毎日フォーラム・牧太郎の信じよう!復活ニッポン 日本はアチコチで「姥捨て山」になる
    3. アイドル刺傷 一方的に好意示す…書き込みエスカレート
    4. アイドル刺傷 ネット上、回復祈る声
    5. 川崎中1殺害 切りながら「ごめん」 リーダー格が証言

    編集部のオススメ記事

    のマークについて

    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです

    [PR]