AP通信報道 違反発覚の回避が狙いか
【ニューヨーク田中義郎】世界反ドーピング機関(WADA)は14日、第三者委員会の第2回調査報告書を公表して、国際陸上競技連盟(IAAF)の前会長、ラミン・ディアク氏がロシアのドーピング違反の隠蔽(いんぺい)に関与していた実態を指摘した。11月に発表した第1回報告書ではロシアの国ぐるみのドーピング疑惑を明るみに出したが、今回は違反を取り締まる立場のIAAFも「腐敗は組織全体に及んでいる」と指摘しており、問題の根深さを浮き彫りにした。
約90ページに及んだ報告書によると、ディアク氏は2013年にモスクワで開催された世界陸上選手権にドーピング違反の疑惑があった過去の五輪の金メダリストを含めた9選手を出場しないように弁護士を通じて、ロシアのプーチン大統領に取引を求めたと指摘した。9選手は大会に出場しなかった。プーチン氏との取引が実際にあったかについての言及はなかった。
ディアク氏はロシアのドーピング違反の発覚を避ける狙いがあったとみられ、報告書ではこうした事実を「IAAFの幹部が気づいていないはずはなかった」と言及。ミュンヘンで記者会見した第三者委のディック・パウンド委員長は「組織の現実から目をそらしていた」と指摘して、IAAFの組織運営の正常化を求めている。
さらに、報告書では、13年世界選手権のロシア国内向けのテレビ放映権料が突然に増額された点も指摘。12年にモスクワのホテルでロシア陸連のバラフニチョフ前会長やディアク氏の息子でIAAFのコンサルタントだったパパマッサタ・ディアク氏、ロシアのテレビ関係者が会談し、600万ドル(約7億800万円)から2500万ドルに増額されたとしている。報告書では、この件に関してIAAFに調査を求めた。
第三者委は昨年11月、第1回調査報告書を公表し、長年にわたる組織的なドーピング違反でロシア陸連を資格停止にするようIAAFに勧告。IAAFは勧告通りにロシア陸連を資格停止とし、現段階では、ロシア陸上界はリオデジャネイロ五輪に出場できない状況となっている。