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米国へ亡命希望急増 国交回復から半年

 米国とキューバが国交を回復して20日で半年になるが、ここにきて米国へ亡命を希望するキューバ人が急増している。亡命キューバ人に永住権を与えていた特例法が、国交正常化に伴い廃止されるとの見方がキューバ国内で広まっているためだ。空路エクアドルへ出国し、陸路で米国へと北上しているキューバ人は1万人を超えるとみられ、周辺国を巻き込む問題となっている。【サンパウロ朴鐘珠】

     米国への亡命手段はボートでフロリダ海峡を渡るか、陸路でメキシコから国境を越えるかに大別される。米領に足を踏み入れた時点で亡命は成立するが、到達前に海上で米沿岸警備隊に拘束されれば強制送還される。転覆の恐れもある海峡越えを選ぶ者は少数派だ。

     陸路を選ぶ場合は南米エクアドルが起点になる。昨年11月末までエクアドルはキューバ人にとって数少ない、査証(ビザ)なし渡航を認める国だった。

     だがエクアドルから米国までは直線距離でも約4000キロ。国境線を8回も越えなければならない。米紙マイアミヘラルドによると、亡命にはエクアドルまでの航空券を含めて1人当たり3000〜7000ドル(約35万〜82万円)かかる。密入国あっせん業者や、口止め料を要求する警察官らに繰り返し金銭を搾り取られるからだ。

     昨年9月中旬にエクアドル入りし、今年1月上旬にパナマまでたどり着いたキューバ人女性は毎日新聞の取材にメールで応じ、「警察が足元を見て強盗まがいにカネを奪っていく」と嘆いた。コロンビアとパナマの間では密林が道路を寸断しており、海岸沿いにボートで密入国させる業者に2時間の乗船で400ドル(約4万7000円)を請求された。女性は旅費を稼ぐためエクアドル到着後に中国料理店で1カ月、不法に働いたという。

     中米コスタリカでは8000人近いキューバ人がニカラグアとの国境地帯で足止めされている。キューバ政府と親密なニカラグア政府は昨年11月、従来80ドル(約9400円)前後の手数料と引き換えに認めていたキューバ人の領内通過を禁止した。中米に滞留するキューバ人を狙った身代金目的の誘拐事件も起き、周辺国は対応を迫られた。

     ニカラグアを除く中米7カ国は協議の末、人道的措置としてキューバ人の一部をメキシコまで移送することにした。今月12日、180人のキューバ人がコスタリカからエルサルバドルへ航空機で移動し、その後バスでグアテマラを縦断、13日にメキシコへ入国した。メキシコ政府は20日間有効の一時滞在査証を発行し、期限内に米国境まで移動するよう促した。残りの滞留キューバ人の対処方法について、移送の費用負担割合も含めた協議を関係国は継続する方針だ。

    「制裁解除」「人権」交渉停滞

     米キューバ両首脳が外交関係正常化の方針を発表したのは約1年前の2014年12月。15年1月から正式交渉を始め、4月には首脳会談、7月には相互に大使館を再開した。しかし、その後の動きは停滞している。特に双方が最優先課題に掲げる、米国の対キューバ経済制裁の全面解除とキューバの人権状況改善で進展が見られず、利害の不一致が際立っている。

     経済制裁については15年10月が転機になるかと思われた。国連総会は「米国の対キューバ禁輸措置解除を求める国連決議案」を191カ国の圧倒的多数で採択した。しかし、米政府は議会の説得が間に合わず再び反対票を投じ、国際社会を失望させた。

     オバマ大統領は任期中の年内にキューバ訪問を実現させたい意向を持つ。だがキューバでは政治犯の逮捕件数が15年も8616件に上り、14年の8899件からほとんど改善されていないことが人権団体の調査で明らかになった。米側が最も憂慮する言論、集会の自由といった人権状況が好転しない現状では、大統領の歴史的訪問に向けた地ならしすら難しい。

     後継者を決める大統領選を11月に控え、オバマ氏がキューバ政策で妥協を見せれば、共和党を利する可能性がある。キューバ側が再三要求するグアンタナモ米海軍基地の返還を米側が「現在は協議対象ではない」と先延ばしするのにも、そうした背景がある。

     【ことば】亡命キューバ人への特例法

     米政府はキューバからの人材流出を促しカストロ政権に打撃を加える目的で1966年に「キューバ人地位調整法」を制定。米国への亡命希望者に対し、米国滞在後わずか1年で永住権を与えている。95年には「ウエットフット・ドライフット(ぬれ足・乾き足)制度」を導入。キューバ人が海上で拘束された場合は強制送還されるが、米領土に上陸もしくは到達した場合は亡命を認める。そのため、メキシコから米国への陸路での入国は不法とはならない。キューバ人の特別扱いは法的根拠を欠くと、米国内からも非難の声が上がっている。

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