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返礼品で争奪戦 「趣旨逸脱」の懸念も

ふるさと納税の返礼品の一つ、豊前一粒かき=北九州市提供

 出身地や応援したい自治体に寄付できる「ふるさと納税」で、寄付の見返りに返礼品を導入する自治体が急増している。総務省の2013年秋の調査で全国の自治体のうち返礼品があるのは52%だったが、昨秋の調査では84%に達した。本来納められるはずの税金が、返礼品目当てに他の自治体に流出してしまい、損失分を取り戻そうと導入する自治体もある。過度な寄付争奪戦への発展に、制度の趣旨からも懸念の声が上がっている。【梅山崇】

 「町に目立った特産品はないが、返礼品でお金を取り戻すしかない」。福岡県志免町の担当者は危機感を持つ。08年度から始まったふるさと納税で、これまで町は返礼品を設けてこなかった。寄付は振るわず、15年4〜9月は3件31万円にとどまる。一方、町民の他の自治体への寄付は年間約800万円に上る。本来なら一部が住民税として町に入るお金だ。返礼品目当ても多いとみられ、町も寄付の見返りに3月にも町内業者が販売する肉や酒、陶芸品を贈ることにした。

 ふるさと納税で寄付をすると2000円の自己負担を超える部分について住民税や所得税が限度額まで控除される。例えば年収550万円の共働き夫婦と子供1人(中学生)の場合、7万6000円を寄付すれば7万4000円の住民税と所得税を支払わなくていい。

 多くの寄付を集める「仕掛け」として始まったのが、地元の特産品などを寄付者に贈る返礼品だ。人気の品物は寄付額の3〜5割の値段とされ、「実質負担2000円で多くのお礼がもらえる」とのインターネットサイトの触れ込みなどで注目された。導入する自治体が増えるに従い寄付する人も増え、制度が創設された08年度の寄付額は全国で計81億円だったが、14年度は389億円、今年度は昨年9月までに453億円に達した。

 北九州市も13年度から特産のカキや和牛の返礼品を始めた。すると寄付額が12年度の432万円から14年度は5600万円へ急増。地場産業の振興にもつながり、市税制課は「工業都市のイメージを覆せ、PR効果がある」と語る。15年度には甲府、岐阜、宮崎の各市などが返礼品を導入。札幌市も来年度から取り入れるという。

 しかし、過度な競争の結果、返礼品が豪華になったり、純金製の手裏剣など地場産業の振興につながるか疑問だったりする自治体も出てきた。制度の本来の趣旨は大都市と地方の税収格差緩和だが、寄付争奪戦によって地方同士で「勝ち組」「負け組」も生みかねず、総務省の昨秋の調査では16%の自治体が「過当競争を懸念」と回答。同省も良識のある対応を求めているものの、「返礼品は各自治体の取り組みで、国が金額に制限を設けることはできない」と歯止めをかけられない状態だ。

 一方、長野県軽井沢町は、寄付収入の使途を町内小中高校への教育施設の充実、奨学金などに活用するメニューを用意し、返礼品を設けなくても14年度は1億7076万円が集まった。制度をまとめた総務省「ふるさと納税研究会」座長の島田晴雄・千葉商科大学長は「返礼品なしでも多額を集められる。どんな政策目的に使うか、自治体が努力して考え抜くことが必要だ」と語り、過度な返礼品競争を懸念している。

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