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建設で退去期限…2世帯、転居先決まらず

新国立競技場の建設に伴い取り壊される東京都営団地「霞ケ丘アパート」(手前)。奥は競技場建設予定地=東京都新宿区で2016年1月29日、本社ヘリから

 2020年東京五輪・パラリンピックの主会場となる新国立競技場(東京都新宿区)の建設に伴って取り壊される都営団地「霞ケ丘アパート」は30日、都が求める退去期限を迎えた。都は2月から解体工事を始める予定で跡地に公園を整備する。多くの住民は転居したが、都の説明に納得できないなどとして2世帯の住民が期限後も暮らし続ける意向を示す。【川畑さおり】

 「どこに行っても私たちの胸中には霞ケ丘の思い出が色鮮やかに残っている」。団地の掲示板に住民がこう記した紙が貼ってある。閑散とした各棟の前には、引っ越しで出た棚、じゅうたんなどの粗大ごみや大量のごみ袋が積み上がる。

 団地内の商店街「外苑マーケット」で昨年末まで青果店を営んでいた町会長の井上準一さん(70)は、半世紀にわたる生活を振り返る。「良いことも悪いこともあったが、3人の子育てや商売を通してここで築き上げた人とのつながりは、人生の『宝』です」

 アパートは戦後間もなく整備された。当初は板ぶき屋根の長屋だったが、1964年の東京五輪開催に伴い、鉄筋コンクリートの団地に建て替えられた。

 旧国立競技場の南側に位置して10棟からなり、かつては最大で300世帯が暮らしたが、12年夏に取り壊しの計画が伝えられ、住民の移転が始まった。

移転を求める東京都の文書を手にする60代女性=川畑さおり撮影

 都によると、昨年末時点の入居者は121世帯。都は移転先として、近くの渋谷区神宮前と新宿区内2カ所の計三つの都営住宅を中心に紹介し多くの住民は神宮前に引っ越した。しかし、2世帯3人の住民が、転居先を決められずにいる。

 そのうち1世帯は、60代の女性が90代の母親と暮らす。長屋時代からこの地域に住む。女性は2DKの部屋でふすまを常に開けたままにし、何かあった時すぐ気づけるよう、母親のベッドがある隣の部屋で寝ている。転居先として在宅介護に必要なスペースがある都営住宅を希望するものの、都から提示された住宅は今より狭かったり、台所を挟んで部屋が分かれていたりした。

 母親は2年前から、不安そうに「私はどこかに行かされちゃうの」「ここにいたい」と言って夜中に起きることがある。「母の状態を考えると、今までの環境に近く、同じデイサービスに通える場所がいい」と望むが、条件が折り合わない。

 都は今月、この2世帯に部屋の明け渡しを求める通知書を送った。都営住宅条例が「住宅の管理上必要があると認めるとき」に明け渡しを請求できると定めていることから、応じない場合は訴訟を起こす方針を伝えた。

 これに対し住民側は、公営住宅法で自治体が入居者に明け渡しを請求できるのは建て替える場合と規定されていることから、明け渡しの法的根拠が説明されていないなどとして「移転の理由がない」と反論している。

解体後、公園として整備

 新国立競技場を巡って東京都は、国の施設であるものの「都民のさまざまな利益となる」(舛添要一知事)として、周辺整備費などを含め440億円程度を負担する。

 都は昨年12月、整備費の4分の1を負担することで国と合意した。その後決まった建築家の隈研吾氏や大成建設などによる整備計画は総工費を1490億円としており、これに旧競技場の解体費55億円を加えるなどした分担対象経費のうち、385億円を都が担う。

 さらに都は、隣接の都立施設と新競技場を連結するデッキの整備費37億円▽霞ケ丘アパート解体後に整備する公園の整備費など16億円−−を負担する。このほかアパートの解体費として3億円程度がかかると見込まれる。

 旧競技場の5万4000人収容に対し、新競技場は6万8000人収容となる。将来的には8万人規模にも対応可能とされ、敷地を広げる必要があり、都は旧競技場跡地南側の都有地約2万6000平方メートルを事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)に27日から無償貸与している。

 アパートはその南側に位置する。新競技場の周囲に「人だまり」のスペースが必要になることなどから、都はアパート跡地を新たな公園として整備する。【飯山太郎】

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