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議長、英に妥協案提示 移民の福祉制限など

 【ブリュッセル斎藤義彦、ロンドン矢野純一】英国が計画する欧州連合(EU)からの離脱を問う国民投票を巡る問題で、英国が求めるEU改革案の交渉が山場を迎えている。トゥスク欧州理事会常任議長(EU大統領)は2日、英国の改革要求への妥協案を提示。EU加盟国からの移民に対する福祉の制限など、英側に配慮した。今月中旬のEU首脳会議までに詳細を詰め合意を目指す。

     英国が改革を求める背景には、社会保障にただ乗りする東欧からの移民や、EUの決定に拘束されることへの反発がある。

    英国のEU改革要求とEU妥協案の違い

     キャメロン英首相は、(1)EU域内からの移民に対し税控除など福祉サービスを4年間制限する(2)EUの「統合深化」の英国への適用除外、各国議会に事実上の拒否権付与(3)ユーロ圏決定事項の英国への適用除外(4)競争政策推進−−を要求していた。

     トゥスク大統領の主な妥協案は、(1)移民急増で英国の福祉制度に過度な圧力がかかる「例外的な状況」が発生した場合、最長4年間の税控除など福祉サービスを制限できる「保障措置」の導入(2)統合深化の適用除外をEUが政治宣言。加盟国議会の計55%が反対すればEUの新法制の審議を停止できる事実上の拒否権を容認(3)ユーロ圏内での救済措置を圏外の国に負担させないなど線引きの明確化(4)規制緩和など競争強化−−。

     英国側の要求を一応満たす内容でキャメロン首相は2日、「詰める部分はあるが、改革を確実にした」と述べた。また、国民投票について「合意すれば数カ月以内に実施する」として6月中旬の実施を示唆。従来主張しているEU残留の立場で臨む方針も示した。

     ただ、福祉サービスを制限する「保障措置」は全加盟国が参加する理事会で承認を得る必要がある。EUから英国に最大の移民を送るポーランドのドゥダ大統領は2日、「EU内での移動の自由と福祉受給は根本的な権利だ。細部を検討する必要がある」と慎重な姿勢を崩していない。

     また、欧州委は英国に「保障措置は今すぐ適用可能だ」としているが、経済が比較的好調な英国が、現時点で移民問題で困窮する「例外的な状況」にあるか疑問だ。

     ユーロ圏との線引きや競争政策促進も具体性は乏しい。妥協案についてトゥスク大統領自身も「さらに議論が必要だ」としており、福祉制限で実害を受ける東欧諸国と英国の厳しい交渉も予想される。

     一方、英国内では複数の閣僚や与党保守党の国会議員数十人がEUからの離脱を求め、キャメロン首相と対立しているとされる。次期首相候補の一人とされるボリス・ジョンソン・ロンドン市長は「妥協案は全く満足できる内容ではない」と発言。EU首脳会議で合意しても国民投票の行方は不透明だ。

     1日公表された世論調査では、EUからの離脱支持は42%で、残留支持の38%を上回っている。

    苦しい「解釈改憲」

     英国の改革要求に対するEU側の回答はほぼ「満額回答」にも見えるが、実は「抜本的な見直しはない」(英BBC)のが実情だ。それはEUが、憲法にあたる基本条約改正には手をつけず「解釈改憲」の形で、事態を乗り切ろうとしているからだ。

     トゥスク提案では、改革案を「次の(基本)条約改正に盛り込む」という部分がカッコ付きになっている。英、EUとも合意できていないとの意味だ。

     基本条約を素直に読めば、英国やデンマークなどを除き、共通通貨ユーロを導入するのは義務だが、妥協案は「自由意思」のように解釈した。

     農業から情報通信までさまざまな部分で統合をはかる「深化」を目指すのがEUの原理だが、基本条約にある「統合深化」は「目標ではない」とした。

     また「条約改正なしに改革はできる」(EU高官)という。条約改正には28加盟国の承認と、議会や国民投票での批准が必要で、反EU勢力が伸長する現状をみると非現実的だからだ。

     しかし、憲法を変えなければ改革の大ナタを振るうことは難しい。結果として英国民には改革の内容はわかりにくく「これでは離脱しかない」(フォックス元国防相)との反発を呼んだ。また、無理な解釈で英国だけでなく、統合の列から離脱する国を出しかねない危険もはらんでいる。【ブリュッセル斎藤義彦】

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