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高齢者虐待2014年度300件 35%急増

 厚生労働省は5日、介護施設や居宅サービスの職員による高齢者虐待が2014年度に300件(前年度比35.7%増)あり、06年度の調査開始以来8年連続で最多を更新したと発表した。特に12年度の155件から2年間でほぼ倍になり、急増ぶりが際立つ結果となった。被害者の77.3%は認知症で生活に支障がある人だった。

     調査は虐待の通報義務を定めた06年施行の高齢者虐待防止法に基づき実施。通報や相談を受けた自治体が調査し、虐待と判断した件数をまとめた。

     それによると、被害者691人のうち、10人は両太ももを骨折させるなど「生命・身体・生活に重大な危険」があった。虐待の内容(複数回答)は、暴力や身体拘束など「身体的虐待」が441人(63.8%)▽侮辱的な発言をするなど「心理的虐待」298人(43.1%)▽金銭を着服するなど「経済的虐待」117人(16.9%)−−の順。

     自治体に寄せられた通報・相談件数も1120件で過去最多。厚労省高齢者支援課は「虐待についての関係者の理解が広まり、通報や相談が増加したことなどが影響している」と分析している。

     虐待した要因(複数回答)で最も多かったのは、職員の業務に対する理解不足など「教育・知識・介護技術等に関する問題」で184件(62.6%)。次いで「職員のストレスや感情コントロールの問題」で60件(20.4%)だった。厳しい労働環境で職員の入れ替わりが激しく、経験ある職員が育ちにくくなっているとみられる。

     また、家族や親族による虐待は、前年度とほぼ同じで1万5739件。被害者は1万6156人、死亡した高齢者が25人いた。虐待者は息子が4割、夫が2割だった。

     虐待の内容(複数回答)は「身体的虐待」が1万805人(66.9%)、「心理的虐待」が6798人(42.1%)。虐待の理由で最多だったのは「介護疲れ・ストレス」(23/4%)だった。

     高齢者への虐待を巡っては、入居者3人が相次いで転落死した川崎市幸区の有料老人ホームで職員による入居者への暴行・暴言が判明。運営会社の親会社「メッセージ」が運営する全国各地の施設でも職員の暴行や暴言、長時間の放置などが明らかになった。【古関俊樹】

    現場に余裕なし

     「人員不足で職員が疲れ切っている」「教育を現場まで徹底させることが時間的に厳しい」。全国有料老人ホーム協会など4団体でつくる「高齢者住まい事業者団体連合会」(高住連)が実施したアンケートには、介護現場で働く人たちの悲痛な声が寄せられた。職員による高齢者への虐待の背景に、厳しい職場環境があるとの指摘も出ている。

     高住連は昨年11月と12月に虐待防止研修を開催し、参加した約2200人中、1815人がアンケートに答えた。このうち82%が自分の施設で「虐待が起きていると思う」「起こるかもしれない」と回答した。高住連の長田洋事務局長は「職員の知識や経験不足から精神的に余裕がなく、そのことが追い打ちをかけて手を出してしまうケースはありえる。特に認知症の高齢者のケアは専門性が高くて難しい」と話す。

     介護職員を取り巻く環境は厳しい。厚生労働省によると、2014年の福祉施設介護職員の平均月収は21万9700円で、全産業の平均の32万9600円を約11万円下回る。離職率は16.5%(14年度)。人手不足で長時間労働を強いられ、職員の疲労やストレスにつながっているのが実態だ。

     特別養護老人ホーム「保谷苑」(西東京市)は1〜2年に1回、職員に虐待につながる言動はないかを確認するチェックリストを配布し、虐待予防に取り組んでいる。多久島靖子苑長(62)は「虐待はいけないと誰でも分かっている。乱暴な言動が当たり前になり、気付かないうちにエスカレートして虐待につながる」と指摘する。【黒田阿紗子】

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