【ブリュッセル斎藤義彦】北大西洋条約機構(NATO)は10日、国防相会議を開き、ロシアに近い東欧の最前線に“抑止拠点”を設置する「新抑止原則」で合意した。米国は東欧の防衛強化のため現状で約6000人を派遣しているのを倍増させるとともに重火器を西欧に配備し、抑止拠点を支える。
NATO外交筋や米側の説明によると、NATOはこれまで集団的自衛権に基づく共同防衛強化に取り組んできた。国防相会議は、新たに「抑止」に重点を移すよう「防衛抑止態勢」の原則変更で合意した。NATOの軍事部門が詳細を検討し、7月の首脳会議で最終承認する。
現状の構想では、ロシアに接するバルト3国とポーランドに数百人単位で移動可能な抑止拠点を設置。米独仏英などの大国が兵力を交代で供給することで攻撃抑止を図る。ブルガリア、ルーマニアにも設置を検討する。
さらに米国は現在、東欧諸国に1旅団計約6000人を派遣、訓練を行っているが、これとは別に戦闘態勢を整えた1旅団約6000人を西欧に常時派兵。戦車など重火器を西欧に常備し、抑止拠点に攻撃があれば、短時間で駆け付ける態勢を整える。新たに司令部を設置するという。
また、宣伝戦や特殊部隊の展開を組み合わせた「ハイブリッド攻撃」に、抑止拠点と地元軍が対応する「抵抗力」を備える方針を打ち出す。その上で核兵器の抑止力としての位置付けを明確にする。
NATO外交筋は「抑止の近代化を図る。ロシアがNATO加盟国を攻撃すれば膨大な犠牲を払う可能性があることを理解させるのが目的だ」と話す。