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幕開け…日米欧、国際協力加速 米初観測で

日米欧の重力波観測装置

 米マサチューセッツ工科大など米国を中心とした国際研究チーム「LIGO(ライゴ)」は11日(日本時間12日未明)、二つのブラックホールが合体した際に放出された重力波を直接観測することに初めて成功したと発表した。重力波はアインシュタインが100年前に発表した一般相対性理論で予言していたが、これまで直接捉えることができていなかった。光や電波など従来の手法では見えなかった天体現象の観測を可能にする新しい「重力波天文学」の幕が開いた。

     重力波は極めて微弱なため直接観測が難しく、アインシュタイン自身も「観測は極めて困難」と考えていた。1970年代、米国の天文学者ラッセル・ハルス、ジョゼフ・テイラー両博士は互いの周りを回る中性子星の公転周期の観測結果が、重力波によってエネルギーが失われると考えると説明できることを発見。重力波の間接的証拠だとして、両博士は93年のノーベル物理学賞を受賞した。

     直接観測に道を開いたのが、レーザー光を使って空間の伸び縮みを検出する仕組みの特別な「重力波望遠鏡」だ。米国は2002年からLIGO、欧州は07年からイタリアにあるVIRGO(バーゴ)で観測を開始。さらに性能アップのため改良を重ねてきた。

     日本は、国立天文台が99年に設置したTAMA300(東京都三鷹市)などで基礎技術を磨いた。さらに、東京大宇宙線研究所を中心に最新技術を導入した大型低温重力波望遠鏡KAGRA(かぐら)を岐阜県飛騨市の旧神岡鉱山に建設中で、17年度から観測を始める予定だ。従来の装置は数百年に1回の大きな重力波しか捉えられなかったのが、日米欧いずれの最新の重力波望遠鏡も1年で10回近く捉えられる計画だ。いち早く性能を高めたLIGOが初観測の栄冠を得た。

     KAGRAを率いる梶田隆章・東京大宇宙線研究所長は12日、記者会見で「(先を越された)悔しさよりも、観測頻度が結構高そうだと期待を持った。一刻も早くKAGRAの観測を開始したい」と語った。

     重力波の観測技術が確立すれば、光や電波では観測できなかった天体現象や宇宙の成り立ちを探ることができる。これまで日米欧が世界初の観測を競ってきたが、新たな天文学の進展には国際協力が不可欠だ。国立天文台によると、今回の成果をまとめた論文には、同天文台重力波プロジェクト推進室長のラファエレ・フラミニオ氏も共著者になっているという。

     安東正樹・東大准教授(重力波天文学)は「重力波は透過力が強く、距離が遠くなっても弱まりにくいため、より遠くまで見ることもできる。星の内部や爆発現象の中心部、宇宙初期の様子など、他の手段では観測できない現象も観測できる」と期待する。【千葉紀和、斎藤広子、須田桃子】

    ブラックホール合体時の波

     「(重力波の)検出は新しい時代の始まり。重力波天文学はいま現実となった」。LIGOが発表した広報文で、広報担当のガブリエラ・ゴンザレス米ルイジアナ州立大教授は初観測の意義をこう語った。

     重力波は、質量を持った物体が動く時、周囲の時空(時間と空間)に生じたゆがみが光速でさざ波のように伝わる現象。アインシュタインが1915〜16年に完成させた「一般相対性理論」で予言した。

     LIGOによると、重力波が観測されたのは米国時間で昨年9月14日。米国内の2カ所の検出装置で得た信号を解析した結果、地球から13億光年離れた場所で、それぞれ太陽の29倍と36倍の質量を持つ二つのブラックホールが合体した際に生じた重力波とみている。

     二つのブラックホールは光速の半分のスピードで近づいて衝突し、より重いブラックホールとなった。その際、太陽3個分に相当するエネルギーが重力波となって周囲に広がったという。11日付の米科学誌フィジカル・レビュー・レターズに論文が掲載された。

     チームは昨年9月〜今年1月の観測データを分析中だが、他にも重力波の可能性のある信号を検出しているという。【河内敏康】

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