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丸川環境相 自覚と誠実さに欠ける

 放射線量がどれぐらいになったら安心して古里に戻れるのか。福島第1原発の過酷事故で放射能に汚染された地域の人々にとって非常に深刻な問題である。

     政府は国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告に基づき帰還の条件や除染の目標を定めているが、人々の納得が得られているとはいえない。帰還する人としない人の判断は分かれ、結果的に家族やコミュニティーの分断も招いている。

     そんな中、丸川珠代環境相が7日に長野県松本市で開かれた会合で、除染などによる年間の追加被ばく線量の長期目標について「何の科学的根拠もなく、誰にも相談せず、その時の環境大臣が1ミリシーベルトまで下げた」と発言した。「その結果、帰れるはずのところにいまだに帰れない人がいる」とも述べたという。

     長期目標はICRPが事故後に目指すべき線量として勧告する年1〜20ミリシーベルトのうちの最も低い値だ。この政策を現政権も維持している。にもかかわらず、除染の責任を担う環境相自らが、それは前の政権が決めた政策で意味がない、と言わんばかりの発言をするのは無責任だ。

     丸川環境相は先週末になって発言を撤回しているが、当然のことだ。ただ、発言の中身や、その後の対応を併せて考えると、撤回すればすむような「失言」とは思えない。

     この発言が報道された直後の記者会見や国会答弁で、丸川環境相は「そういう言い回しを使ったかどうか記憶にない」と述べた。その後も「誤解を招いたとしたら言葉足らずで申し訳ない」と釈明しつつ、発言は撤回しなかった。それが12日の夕方になって、「自分の発言内容が確認できた」として、「福島に関する発言を撤回する」と表明した。

     こうした一連の対応や受け答えからは、自分の誤った発言を率直に認め、責任を取ろうとする誠実さが感じられない。記者会見でも国会答弁でも質問に正面から答えず、はぐらかしているようにみえる。ICRPの勧告を知りつつ、野党批判のために被ばく線量を持ち出したのだとすれば、なおさら問題だ。環境相としての自覚に欠け、適性にも疑問を感じる。

     原発事故から5年。除染と被ばくの問題は福島の人々を翻弄(ほんろう)し続けてきた。古里に帰りたい人々に安心して帰ってもらうためにどうすればいいのか。帰らないと判断した人々をどう支援していくか。政府が人々の信頼を得つつ解決しなくてはならない課題は山積しているのに、十分な対策が取られてきたとはいえない。

     そうした中での丸川発言は、政府への信頼をさらに失わせ、解決を遠のかせてしまう。

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