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介護施設の殺人 二度と起こさぬ対策を

 お年寄りをベランダから投げ落として殺害したとして、川崎市幸区の有料老人ホーム「Sアミーユ川崎幸町」の元職員(23)が殺人容疑で逮捕された。特異な事件には違いないが、背景にある職員のストレスや閉鎖的な構造といった虐待リスクは多くの介護現場に共通している。二度と悲惨な事件が起きないよう万全の対策を講じなければならない。

     2カ月の間に入居者3人が立て続けに転落して死亡、しかも86〜96歳がベランダの高い手すりを乗り越えたというのだ。不審な点はたくさんあったが、警察は当初、遺体の司法解剖すら行わず、本格的な捜査を始めたのは3件目が起きた後だ。

     もしも、子供の施設や病院での事件だったら、このような対応だっただろうか。認知症に対する間違った思い込み、介護職員への安易な同情が警察の判断に影響しなかったか、検証が必要だ。

     「施設での仕事にストレスがあった」と元職員は供述しているというが、介護の仕事の大変さに責任転嫁することは許されない。この施設では別の職員による虐待事件が以前に起きており、元職員は入居者の所持金を盗んだ容疑でも逮捕されている。現場職員のモラルの低下を許してきた経営者側の管理責任についても問わねばならないだろう。

     ただ、認知症については専門的な知識やスキルのある職員でさえ精神的に追い詰められることがあるのは事実だ。都市部の介護施設は慢性的な人手不足に陥っており、経験がない人でも雇用しないと運営できない現状もある。

     2014年度に確認された高齢者虐待は2年連続で増加し、1万6039件に達した。中でも介護施設や居宅サービスの職員による虐待は8年連続で過去最多を更新し、この2年で倍増している。被害者の8割弱に認知症があり、虐待の要因は「教育・知識・介護技術等に関する問題」や「職員のストレスや感情コントロールの問題」が多い。

     仕事が厳しい割に報酬が低いこともよく指摘される。介護職員の平均月収は約22万円で全産業平均を11万円も下回る。有料老人ホームなどの入所施設は人手不足で夜勤が頻回あり、大声で暴れたり職員に暴言を吐いたりする認知症の人のケアに職員がストレスをためているというのだ。

     そのために介護職の離職率は高いと言われる。しかし、現実には運営する法人の理念がわからない、職場に相談できる人がいないなどの理由も多い。経営する側の理念や指導力がないため、若い職員がやりがいを感じられず、不安になって離職していくのである。福祉現場の「死角」を総点検しなければならない。

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