メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

作家の津島佑子さん死去68歳 太宰治の次女

津島佑子さん=2013年6月5日、棚部秀行撮影

代表作に「火の山−−山猿記」「笑いオオカミ」

 人間の生死や近代的価値観を問い続け、現代文学の先端を走った作家の津島佑子(つしま・ゆうこ、本名・里子=さとこ)さんが18日午後4時10分、肺がんのため東京都内の病院で死去した。68歳。葬儀は近親者で営む。喪主は長女香以(かい)さん。

 1947年3月、東京・三鷹で作家・太宰治(本名・津島修治)の次女として生まれた。翌年6月、太宰は自死。さらに知的障害のある兄を、12歳の時に亡くした体験も後の小説執筆に影響を与えた。白百合女子大英文科在学中に同人雑誌「文芸首都」に参加し、69年「レクイエム」でデビュー。72年に「狐(きつね)を孕(はら)む」が芥川賞候補となり、同賞を熱望しながら受賞できなかった太宰を引き合いに「亡き父のかたきを取るチャンス」などと世間の話題になった。

 「私にとって親は母だけ。なぜ太宰という父の子と言われるのか」と反発しつつ、結婚・出産・離婚の実体験を基にして揺れ動く女性の内面世界をえぐった「葎(むぐら)の母」「草の臥所(ふしど)」など秀作を発表。離婚して子供と暮らす母親の想像妊娠を描く長編「寵児(ちょうじ)」で78年女流文学賞を受賞し、作家としての地位を築いた。「光の領分」で79年野間文芸新人賞を受賞した。

 85年に8歳の長男を病気で失った悲しみを基に、生死そのものに迫る「夜の光に追われて」で87年読売文学賞。91年の湾岸戦争では作家の中上健次、評論家の柄谷行人さんらと共に日本の「加担」に反対する声明に名を連ねた。

 母方の一族をモデルにして日本の近代史と家族史を浮き彫りにし、太宰を思わせる人物が登場する「火の山−−山猿記」は98年の谷崎潤一郎賞と野間文芸賞をダブル受賞し、NHK連続テレビ小説「純情きらり」(2006年)の原案となった。戦後混乱期を旅する孤児たちの姿を幻想的に描いた「笑いオオカミ」(01年大佛(おさらぎ)次郎賞)は、生命力あふれる傑作とされ、団塊世代が戦争を問い直す09〜10年の毎日新聞連載「葦舟(あしぶね)、飛んだ」につながった。アイヌの叙事詩など先住民族の文化や口承文芸にも深い関心を寄せた。

 「黄金の夢の歌」で11年度毎日芸術賞。戦後占領期に米兵が日本人との間に残した孤児らの視点で原爆や福島原発事故の責任を問うた「ヤマネコ・ドーム」(13年)も高い評価を得た。他に「火の河のほとりで」(83年)、「ナラ・レポート」(04年度芸術選奨文部科学大臣賞など)。昨年1月に肺がんと診断され、闘病しつつ「父をテーマに書く」と準備を進めていたという。

 作家の太田治子さんは異母妹。

外へはじけ飛ぶような文学

 作家の黒井千次さんの話 台湾やモンゴルなど日本以外の土地を舞台にしたりアイヌの伝承にこだわったりと、同世代の作家と違うハードで硬いものが作品にあった。外へはじけ飛ぶような文学がどんな結実を生むのかを確かめられず残念。父の太宰治のことは自分からは触れなかったが、何かの席で太宰のスキャンダラスな面が話題に上った際に「私の考え方は違う」と強い調子で言った。実は大変な思いをしていたのかもしれない。

関連記事

毎日新聞のアカウント

話題の記事

アクセスランキング

毎時01分更新

  1. 24時間テレビ 裕太容疑者逮捕で前代未聞ドタバタ劇も間に合った
  2. 貧困たたき 新宿で緊急抗議デモ 作家の雨宮処凛さんらも
  3. 埼玉少年殺害 「先輩に言われ蹴った」祖母に後悔の念
  4. 鈴木亜美 夫との“交際きっかけ”詳細語る 松本人志は「とんだ尻軽女」
  5. 中居正広 SMAP解散語らず…さんまは「ファンを大事に」伝える

編集部のオススメ記事

のマークについて

毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです

[PR]