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11省「記録なし」…作成ルール、有名無実化

霞が関の官庁街と国会議事堂=本社ヘリから

 「口利き」など国会議員による官僚への不当な介入を防ぐための政官接触の記録について、作成を定める国家公務員制度改革基本法の施行(2008年6月)後に作られたものを国の全11省に情報公開請求したところ、一通も存在していないことが分かった。基本法に加えて現内閣は接触記録の作成や保存、公開を申し合わせてもいるが、ルールは有名無実化している。

 国の11省(総務▽法務▽外務▽財務▽文部科学▽厚生労働▽農林水産▽経済産業▽国土交通▽環境▽防衛)を対象に毎日新聞は昨年11月、基本法に基づく今年度分(昨年4月1日以降)の政官接触記録を、情報公開請求した。これに対し全省が「作成していない」または「保有していない」と回答した。そこで11省に今年1月、昨年度(昨年3月31日)までに作成した記録をすべて開示するよう改めて請求した。これにも、全省が「ない」と回答した。

 基本法や現内閣の申し合わせは、官僚が閣外の国会議員と接触した際に記録を作り、保存、公開するよう定める。しかし、基本法を所管する内閣人事局は「不当な要求があった時のみ記録する」と解釈。各省もこれにならい「不当な要求はなかった」として記録を作っていない。

 一方、基本法作りに携わった政府関係者は「すべての政官接触を公平・正確に記録・開示することが法の趣旨だ」と指摘している。

 甘利明前経済再生担当相の現金授受問題を巡っては、国交省や環境省の幹部職員が甘利氏の当時の秘書と接触していたことが明らかになったが、政官接触の記録は作られていなかった。【日下部聡】

「政官が付き合い過ぎ」

 国家公務員制度改革基本法が国会議員と官僚のやり取りを記録するよう定めているのに、同法施行後、国の全11省が作成した記録は一通もなかった。「政」と「官」の関係を透明にする制度はなぜ機能しないのか。「日本の統治構造−−官僚内閣制から議院内閣制へ」などの著書で知られる飯尾潤・政策研究大学院大学教授に聞いた。

飯尾潤・政策研究大学院大学教授

 問題の根は深く、一朝一夕に解決するのは難しいだろう。

 政官接触の記録・公表は政治家の圧力から官僚を守る制度だ。不当かどうかは政府や国民が判断する。だから、すべて記録するのが国家公務員制度改革基本法の建前だが、現状では不当かどうかを官僚自身が判断できるので機能していない。関係者が不利になりそうなことを、わざわざ記録するはずがない。

 日本の官僚は政治家と付き合い過ぎだ。官僚が議員会館を回ったり、党本部まで出向いて説明したりということは外国ではあまり見られない。政策決定は政党政治家による内閣が担い、官僚はその実行に徹するのが本来の議院内閣制だが、日本は両者が融合してしまっている。

 例えば英国の官僚は証拠を残すために、政治家の問い合わせには文書でしか応じないのが原則だ。組織文化が大きく違う。

 そもそも日本の行政機関は、公文書をきちんと残さない傾向がある。大きな原因は人手不足だ。日本の公務員は諸外国に比べ非常に少ない。作った文書を重要度で分類し、それぞれ保存期間や公開範囲を決めていく膨大な作業が必要だが、日々の業務に忙殺される官僚には酷だろう。国会議員への対応が多忙さに拍車をかけている皮肉な現実がある。

 交渉ごとなど機微に触れる内容は、一定期間秘密にした後に開示するような法整備も検討すべきだ。そうしないと官僚は重要なものほど残さないという判断をするようになる。要員増が望めないなら技術で補うしかない。文書を作ると自動的に組織内で共有され、整理や蓄積もされるような電子システムを構築する必要がある。【聞き手・日下部聡】

飯尾潤(いいお・じゅん)

 1962年生まれ。東京大大学院博士課程修了。専門は政治学・現代日本政治論。埼玉大助教授などを経て現職。著書に「現代日本の政策体系」「政局から政策へ」など。

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