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英国とEU 残留して影響力行使を

 英国が欧州連合(EU)にとどまるか離脱するかを国民投票で決めることになり、4カ月に及ぶ論戦が始まった。残留を主張するキャメロン首相は、国民にわかりやすい言葉で欧州統合の歴史的重みや英国が加盟し続ける意義を説く必要がある。

     第二次世界大戦後、欧州諸国が二度と戦火を交えることのないようにと、統合の長い歩みは始まった。6カ国で出発したが、旧共産圏諸国を含む28カ国の大連合へと成長した。

     ただ、英国の関わり方は当初から特別なものだった。加盟は1973年と遅れ、域内を国境検査なしで自由に移動できるシェンゲン協定には例外的に参加していない。単一通貨ユーロも非加盟である。

     根強い「反欧州」派への配慮から、何かと特別扱いを許してもらってきた英国だが、ここでEUからの離脱を選べば、英国自身にとっても欧州や国際社会にとっても不利益な結果をもたらすだろう。

     EUの力の源泉は、文化的にも民族的にも多様性に満ちた多数の国家が結束するところにある。戦争や対立の歴史を乗り越え、平和と繁栄という共通の理想の下で常に合意点を探る努力を続けているから、国際交渉の場でも影響力を行使できる。

     米国と密接な関係にあり、欧州大陸の主要国と一定の距離を置く英国は、EU内で独自の役割を果たしてきた。英国が離脱の先例を作れば、EU内で遠心力が強まり、欧州が不安定化する恐れがある。混乱の波は英国や世界も揺さぶりかねない。

     くしくも世界では今、連帯より分離へ向かわせる力が増しているように映る。米大統領選の候補者選びでも鮮明になった傾向だが、エリート層と大衆の溝は広がる一方だ。

     英国の調査によると、残留の賛否は伯仲しているが、エリート層や大企業では残留派が目立ち、労働者層や零細企業に離脱派が多いという。拡大と深化を重ねてきた欧州統合への理解を広く求める努力が指導者に足りなかったためではないか。

     「外国人に職や自分たちの血税が吸い取られる」と不安をあおる反EU派の主張は一見、わかりやすい。しかし、キャメロン首相はこれに対抗しようとするあまり、欧州統合の本質を語ることから逃げるようでは困る。「加盟国がこれ以上密接になるような統合には永久に加わらない」(首相)。こうした約束は将来の英国にもEUにも禍根を残す。

     戦後の欧州の繁栄は、統合の歩みの果実だ。EU域内の関税や国境管理の廃止によるコスト低下など直接的メリットだけでなく、地域の安定や国際舞台での存在感など計り知れないものがある。70年に及ぶ努力を無駄にしてはならない。

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