会長側近を役員派遣
経営再建中のシャープは25日、台湾の電子機器受託製造大手、鴻海(ホンハイ)精密工業から4890億円の出資を受け入れ、傘下に入ると発表した。鴻海はシャープ全株式の66.07%(議決権ベース)を保有する親会社となり、ナンバー2の戴正呉副総裁らを役員としてシャープに派遣する方針だ。
日本の電機大手が外資に買収されるのは初めて。6月の株主総会で承認後、鴻海が出資する。
シャープが公表した契約内容によると、鴻海は成長資金として4890億円を出資。シャープはこれを元手にスマートフォン(多機能携帯電話)向けの次世代パネル・有機EL開発に2000億円を投じる。
また、鴻海はシャープの主力行やファンドが持つ優先株2250億円分のうち1250億円分を額面通り買い取る。さらに、シャープと共同運営する大型液晶パネル工場(堺市)の土地を500億円程度で購入する方針で、支援総額は6600億円規模になる。
鴻海はシャープの経営の独立性を維持・尊重し、既存の従業員の雇用も原則維持する。「シャープ」のブランドも継続使用する。派遣する戴副総裁は、鴻海の郭台銘会長が同社を創業した当初からの側近だ。鴻海は保証金1000億円をシャープ側に委託し、鴻海が契約を守らなければシャープが違約金として受け取る。
官民ファンドの産業革新機構もシャープ本体に3000億円出資するなどの支援策を提案していたが、25日のシャープ臨時取締役会は全会一致で鴻海案受け入れを決めた。産業革新機構は「シャープの取締役の間で真剣に議論され、最終的な判断を下された結果」とのコメントを発表した。【浜中慎哉、岡大介】
正式契約は保留
鴻海は25日、「シャープから鴻海をパートナーとして選択すると決議したとの通知を受け取った」との声明を発表した。そのうえで「シャープが24日朝、新たな重要文書を鴻海に提出した。精査する必要があり、双方が共通認識に達するまで契約を延期するとシャープ側に通知した」と正式契約を保留したことを明らかにした。
詳細は明らかにしていないが、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)は25日、関係筋の話として、鴻海がシャープから、総額約3500億円の「偶発債務(訴訟や会計変更などで将来返済義務の発生する恐れがある債務)」のリストを24日に受け取ったと報じた。主力行の幹部は「実際に借金になる可能性は低く、大勢には影響ない」とみている。シャープの広報担当者は「コメントは控える」とした。【台北・鈴木玲子】