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「スマホも少子化も怖くない」

ミュウを手にポケモンの魅力を語る株式会社ポケモンの宇都宮崇人・常務執行役員=東京都港区の株式会社ポケモンで2016年2月25日、大村健一撮影
1996年2月27日に発売された「ポケットモンスター赤」=©2016 Pokémon. ©1995-2016 Nintendo/Creatures Inc. /GAME FREAK inc.
1996年2月27日に発売された「ポケットモンスター緑」=©2016 Pokémon. ©1995-2016 Nintendo/Creatures Inc. /GAME FREAK inc.

 携帯用ゲーム機「ゲームボーイ」のソフトから始まって、アニメ、カードゲーム、キャラクターグッズなどが世界的な人気を誇る「ポケットモンスター(ポケモン)」が27日、第1作のゲームソフト「ポケットモンスター 赤・緑」の発売から20周年の節目を迎えた。はやりすたりの激しいコンテンツビジネスの世界において、消えていくキャラクターも多い中で「太く」「長い」人気を誇り、「ポケモン」は世界の共通語になりつつある。人々を魅了し続ける理由や、今後に向けた一手を探った。【大村健一/デジタル報道センター】

 「『赤』と『緑』のどちらを買おうか悩みに悩んで、悩みすぎて一回、家に帰って緑に決めたときのワクワクは全部、覚えています」。芸能界きってのポケモンファンで「ポケモンが生きる意味を教えてくれた」(小学館)という著書もあるタレントの中川翔子さん(30)は20年前、原点となったソフトを買った帰り道の鼓動の高鳴りが忘れられない。「画期的だったのは基本的には一人でやるものだったゲームが、通信ケーブルを使って、冒険をしながら育てたポケモンを交換したり、バトルをして楽しめることでした」という。発売前から手にする日が楽しみで仕方なかった。

 一人っ子で鍵っ子だった少女時代、芸能活動を始めたこともあって学校に友だちが少なくネガティブな思考に陥りがちだった高校時代、いつもそばにポケモンがいてくれたという。今も、テレビ東京系列などで放送中のポケモン情報番組「ポケモンの家あつまる?」に出演している。「この前、番組で11歳の男の子にぼこぼこに負けてしまって、胃がきりきりするくらい悔しかった」と笑う。ポケモンを一言で表すとしたら? 「愛があって、夢があって、命があって、笑顔があって……一言で表すのは難しいですね」

巧みなメディアミックス戦略と、徹底した異文化への適応

 20年。振り返ればあっという間かもしれないが、ゲームやキャラクターなどコンテンツビジネスの世界において、時の流れは残酷だ。たとえば、画面上で生き物を育てて遊ぶ小型ゲーム機「たまごっち」は同時期に爆発的に流行し、その後も何度かブームの波が来たが、ポケモンほど安定した人気を維持するには至っていない。20年間で消えたキャラクターとなると数知れない。その中でポケモンは、ゲームソフトが全世界で計2億7700万本を売り上げ、アニメもこれまでに93カ国・地域で放送され(いずれも昨年9月末現在)、国内にとどまらない人気を誇っている。

 ゲームやアニメなどコンテンツビジネスの国際展開に詳しい白鴎大経営学部の藤井健教授(58)は長く人気を保っている理由について「原作のゲームから、アニメ、カードゲーム、キャラクターグッズなどを次々に展開することでシナジー(相乗効果)が生まれ、さまざまな角度からポケモンの楽しみ方を提供することでファンを広げてきた。この『メディアミックス』という手法が成功した点が大きかった」と分析する。

 もう一つはコンテンツ管理と、国際展開の際のローカライズ(異文化への適応)を徹底している点だ。ポケモンはブランドを守り続けるため、他に例がほとんどない「仕組み」を採用している。核となるゲーム専用機向けのソフトは「生みの親」である田尻智さんが社長を務める「ゲームフリーク」が開発を手がけ、任天堂が販売する。他のコンテンツと大きく違うのは、株式会社ポケモン(ポケモン社)が1998年に設立され、ゲームを含めたポケモン全体の商品、キャンペーンなどのプロデュースを一手に引き受けている点だ。

 特に、藤井教授も「現代では現地の文化に合わせるのは当たり前だが、きっかけとなったのはポケモンだったと思う」と評価する徹底したローカライズは、ポケモン社の存在があってこそ。常務執行役員で、ゲームの開発部門を担当する宇都宮崇人さん(37)は「ローカライズのクオリティーは世界トップレベルだと思う。たとえばゲームのせりふなどの日本語を現地の言葉に訳す際に、英語を挟まずにダイレクトに訳せる貴重な人材を各地でそろえている。日本のどのエンターテインメントにも負けないくらいその点は力を入れていると思う。また、今は初めからどの国の基準でも耐えうるコンテンツを作ることを心がけている。いろいろな文化があるので大変だが、世界で売れ続けている要因になっていると思う」。

スマホと少子化の時代に、新たな一手は?

 20年間、さまざまなライバルが現れても、人気は揺らがなかった。盤石に見えるが、懸念材料もある。一つはポケモンの「ルーツ」であるゲーム専用機の市場の縮小が止まらないことだ。ゲーム雑誌「ファミ通」の推計では専用機の国内ソフト市場は2014年が2617億円。一方でスマートフォン(スマホ)向けゲームアプリは7154億円で約2.7倍だ。「それならスマホに移ればいいのでは?」と思い浮かぶが、ポケモンのような優良コンテンツが「主戦場」を移せば、さらにゲーム専用機が厳しい立場に追い込まれる。

 この点で「あくまで主戦場はゲーム専用機」というポケモン社の姿勢に、ぶれはない。宇都宮さんは「核となるリッチな物語はスマホではできないと思う。ポケモンの源流は、ゲーム専用機でのソフトだということはとても大事なことで、そこを外すとうまくいかなくなるのではないか。スマホにはスマホに合った分野があり、短い時間で刺激のあるコンテンツが求められる」と話した。昨夏、手軽に楽しめるパズルゲーム「ポケとる」で本格的にスマホゲームに参入し、昨秋はスマホの位置情報機能を駆使して現実世界の地図上にちりばめられたポケモンたちをゲットしにいく「Pokemon GO」の開発を発表した。今年中のリリースが予定されている。

 国内におけるもう一つの懸念は、少子化でターゲットとなる子供たちが減少することだろう。この点について宇都宮さんは「確かに少子化は進むが、発売から20年がたち、ポケモンをやったことがある大人はこれから世界中で増える一方になる」と前向きだ。20周年に合わせ、27日に第1作の「ポケットモンスター 赤・緑」がニンテンドー3DS向けにダウンロード販売を開始。合わせて、9言語に対応した新作の「サン」と「ムーン」の今年冬の発売も同日発表された。「今年は一気にいろいろな商品が出てくる予定なので、ファンはすごく楽しめるはず。つねに最先端のエンターテインメントを意識しながら進化し、ポケモンを永久に存続させていくことを目指したい」と宇都宮さん。

 発売当時の子供たちは大人になり、子育て世代になった。中川さんも「いつか自分の子供や孫とバトルしたい。母ちゃんを倒してみろとか、言ってみたい」という夢があるという。世代を超えてポケモンの魅力を継承できるかが、大きなカギとなる。

<中川翔子さんのインタビューの詳細は28日に掲載します>

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