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桜宮高判決 指導名目の暴力を絶て

 大阪市立桜宮(さくらのみや)高の男子生徒がバスケットボール部の元顧問教諭の日常的な暴行と暴言によって精神的に追い詰められた末に自殺するという痛ましい事件から3年が過ぎた。

     再発防止に向けて遺族が学校管理者の大阪市に損害賠償を求めた裁判で東京地裁は体罰と自殺の因果関係を認め、約7500万円を支払うよう命じる判決を言い渡した。

     わずか17歳で自ら命を絶たざるを得なかった男子生徒と遺族のことを思うと胸が痛む。市は判決を受け止め、同じような犠牲者を出さないためにも部活動をはじめ学校現場から暴力を根絶しなければならない。

     判決は元顧問の行為を「教育上の指導として法的に許容される範囲を著しく逸脱した暴力的な虐待行為」であり、「たたかれてやるのは動物と一緒」などと罵倒したことは「生徒の人格の尊厳を傷つける侮辱的な暴言」と指摘した。

     元顧問は1994年の就任当初から暴力を繰り返していた。男子生徒が自殺する1年以上前から暴力を告発する通報が市には寄せられていたにもかかわらず、事実上放置した。裁判でも市は自殺の大きな要因として「家族の言動」を挙げるなど責任転嫁の姿勢に終始した。

     事件を契機に全国の運動部活動で「指導」と称して、試合でミスしただけの子どもたちを殴る、たたくなどの行為が横行していた事実が表面化した。事件後、文部科学省が実施した調査では中学と高校での体罰の4割前後が部活動中だったことが分かった。暴力は子どもたちの人間性や尊厳を否定する行為であり、競技力を向上させる効果的な方法として容認することは許されない。

     文科省は全国に配布した部活動指導のガイドラインで、特定の生徒に対して執拗(しつよう)、過度に肉体的、精神的負荷を与えることなどを許されない行為として示した。大阪市は体罰と暴力行為に関する処分基準を厳格化した。その他の自治体も研修会などの取り組みを進め、体罰や暴力は許されないという意識が学校現場に浸透してきたとの指摘もある。

     遺族が提訴に踏み切ったのは「暴力的な指導の抑止」につながる判決を求めてのことだった。判決を受け、父親は「市は元顧問に損害賠償を求め、責任を追及してほしい」と要望し、大阪市も賠償金の負担を元顧問に求める考えを示した。

     国家賠償法は、故意または重大な過失があった場合、国や自治体は公務員個人に賠償を求めることができるとしている。元顧問の行為が重大な過失にあたるかどうかは裁判所が最終的に判断するが、部活動における暴力的な指導を抑止し、根絶する上で一定の効果は見込めるだろう。

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