【モスクワ杉尾直哉】ロシアの野党指導者で反プーチン派として知られたボリス・ネムツォフ元第1副首相(当時55歳)がモスクワで暗殺されてから27日で1年。野党支持者らがモスクワ中心部で大規模な追悼集会を開いた。ネムツォフ氏と共闘していた野党指導者、ミハイル・カシヤノフ元首相らが参加し、「プーチンなきロシアを」などと訴えた。ロシアのメディアは約3万人が集まったと報道。暗殺直後の7万人デモに次ぐ大規模な反政府集会となった。
ネムツォフ氏はクレムリン(露大統領府)近くの路上で射殺された。捜査当局は、露南部チェチェン共和国のカディロフ首長の私兵組織幹部ら5人を実行犯として逮捕・起訴した。だが、殺害を指図した黒幕は判明しておらず、野党支持者の間では、カディロフ首長や、同氏を支えるプーチン政権の関与を疑う声が渦巻いている。
ネムツォフ氏の側近だった野党指導者、イリヤ・ヤーシン氏は「殺害を指図した本当の犯人は逃げている。政治的殺人がロシアで続いている」と話す。事件後に英国へ事実上亡命した長女、ジャンナ・ネムツォワさん(31)は25日、AP通信に「プーチン大統領が捜査を指揮すると言いながら、満足な結果が出ていない。プーチン氏個人に事件捜査の責任がある」と述べた。
野党は9月の下院選挙へ向け、反プーチン派を結集したい考えだ。ただ、プーチン氏は9割以上の高支持率を維持しており、反プーチン派の議席獲得は困難とみられている。
プーチン政権下では2006年にも反プーチン派の女性ジャーナリストが暗殺され、殺害を指図した黒幕は判明していない。